2010/10/05

とんでもなくご無沙汰

前回の更新が8月初め・・・ほぼ2カ月前ですね。大変ご無沙汰しております。

twitterでは多少sparseではありますが、つぶやいていました。そちらを見ていた人はご存知かと思いますが、8月末から結構大規模な(?)自宅引越がありまして、9月に入ってからは運んだ荷物の整理に専念・・・出来る訳もなく(苦笑)、研修旅行の引率、研究発表会への参加(2回)、学科イベントへの参加等などの合間を縫って荷ほどきをしています(現在完了形ではありません。残念ながら”進行形”です)。

9月末からは夏休みも明け、皆さん同様、我々教員も授業再開です。専攻科生の皆さんはインターンシップ報告会に研究中間発表、5年生も中間発表(≒コンソ)、4年生は専攻科生同様インターンの報告があります。授業以外にもいろいろ忙しいですが、心機一転、お互いに頑張りましょう。
僕は何とか今月前半くらいまでには、少なくとも自分の部屋の整理、ネット環境まわりの整備を終え、普段の生活を取り戻したい(^^;)と考えています。

そんな忙しい状況の中でも、趣味というか性(さが)というか、読書は続けています。皆さんに紹介できそうな本としては、現在、スティーブ・ジョブズのプレゼンに関する本を読んでいます。読了&時間が出来たら紹介したいと思っています。

2010/08/02

見出しに「機械学習」は珍しい

すっかり”一月に一回”の更新頻度となってしまい申し訳ありませんが,お察し下さい(苦笑)。
今回は,つい先ほど見た,どうしてもすぐにアップしておきたい記事を見つけたので,簡単にだけ紹介します。

【科学】将棋女流王将に挑むコンピューター 10月決戦 「機械学習」で棋力アップ 合議制で大ポカ阻止めざす (産経ニュースWeb版 2010.8.2 07:51記事)

タイトルにも書いた通り,機械学習の文言が新聞の見出しに載るのはかなり珍しいでしょうね。ちなみにここで言う機械学習は,(多分)ニューラルネットや強化学習,決定木の枝刈りあたりを指しているのだと思います。多分、と書いたのは,この手の将棋プログラムは競争相手が多いため,主要な部分はブラックボックスとしていることが多いためです(ちゃんと調べれば分かるかもしれませんが)。

私が以前所属していた大学の研究室でも,将棋の盤面評価や,良い手の探索などに関する研究が行われていましたので,ボナンザ,激指などといいう名称は非常に懐かしいです(他に,柿木将棋なんていうのもありました)。
ただし,私のところに来て,将棋のシステムを作りたい,といっても多分無理です。この辺りの分野には大きな知識やノウハウの蓄積が必要です。また,研究者が将棋にそれなりに詳しいことも重要だと思います(もちろん,知らなくても出来るかもしれませんが,知らない人がやりたいとは思わないでしょうね)。強化学習の研究についてならばいくらでも相談に乗りますが,強化学習を使った将棋の研究,となったとたんに一気にハードルが上がると思って下さい。
でも,面白いし夢のあるテーマだと思いますので,興味のある人は調べてみて下さい。

チェスでは,すでに世界チャンピオンを負かすシステムが出来ています。囲碁や将棋,分野は違いますが,サッカーでもいずれ・・・

2010/07/05

結果報告

およそ一カ月ほど前、健康診断の結果がアレだったので、○○断ちしてみよう、というエントリをアップしましたが、一か月経ちましたので、”○○断ちを断ち”たいと思います。

ちなみに、ちゃんと一カ月断っていました。が、結果はどうなのか、よく分かりません。体調は良かった気も一瞬したのですが、ちょうど嵐のように忙しい時期とシンクロしたため、結局何がどう作用して体調がそうなっているのか、再現性がない状況になってしまい。

まぁ、また適当なタイミングで適当な間隔で断ってみて、断った直後に血液検査でもしてみようかと思っています。タイトルはそれっぽいネーミングになっていますが、報告できるような結果はないなぁ。

2010/06/27

バカは死ななくても治る?

かなり挑発的な(?)タイトルで始まっていますが、本屋さんで本漁りをしていた時、インパクトたっぷりで飛び込んできたのが、

バカはなおせる & もっとバカはなおせる (久保田 競 著)

という二冊でした。ただ、個人的にはタイトルへ目が言ったのは一瞬で、すぐにサブタイトル

「脳を鍛える習慣、悪くする習慣」 & 「最新脳科学で頭が良くなる、才能が目覚める、長生き健康になる!」

に目が行きました(実のところ、一冊目を買う気になって、二冊目はそれほどサブタイトルにも興味を惹かれなかったのですが、”最新脳科学”というキーワードと、内容が続編になっていそうだったのでまとめ買いしたというのが本当です)。
読み進めてみて分かったことですが、著者は米国神経学会で多数の論文を発表している先生でした(論文を数多く出せば良い、というものでは全くありませんが、ちゃんとした学会のちゃんとした論文にたくさん論文が載っている先生は、少なくともその分野では能力の高い先生ということになります)。サブタイトルにある通り、脳に良い習慣や食べ物、子供の脳を良くする(頭を良くする、とか、良い子を育てる、というのとはちょっと違うんですが、確実に関連性はあるでしょう)方法等が記述されています。それ自体、至極当たり前と思えるような内容なのですが、そこに根拠として、これまでの脳科学研究の成果が記されているという意味で説得力があります。

また、個人的に非常に楽しかったのは、この本自体が最新(二冊目はまさに、ここ3,4年の)脳科学研究の”サーベイ”となっている点でした。
サーベイ(survey)とは辞書的には「調査、外観」という意味があります。特に研究分野では、過去の論文を調査すること、または調査したもの(サーベイ論文)を指します。研究にはオリジナリティが必要ですが、自分の興味のある分野、技術、考えがオリジナルであるかどうか、また、自分のアイディアを実現するために利用できるものはないかを調べるという意味でも、サーベイは非常に重要です。
一般的なサーベイでは個々の論文を調査するわけですからかなり専門的な内容になります。しかし、この2冊については、過去から現在に至るまでの研究のトピックが、脳科学を専門分野とはしない一般の人々にも非常に分かりやすく記述されています。加えて、研究内容については可能な限り分かりやすい説明を加えつつ、現時点で分かっていないことは分かっていない、難しいことは難しいと、非常に誠実に書き綴られていることに好感が持てます。

最新研究に携わっていれば、難しくて解けない問題、現状では未知の問題に遭遇します。それを敢えて明らかにせずうやむやにしたり、仮説を真理であるかのように書いてしまうことで、一般の人が大きな勘違いをしたり、それに実害が伴う場合もあります。読者が研究者の場合、その誤った原理をスタート地点としてしまうことで、研究の方向性が大きくずれることがあります。一度ずれた方向に進んでしまった研究を正しい方向へ戻すには、多くの労力と時間を伴います。

本書の著者は、最近の脳科学ブーム、それに関連するTV番組や書籍等の中には、必ずしも現時点で明らかになっていない情報を、あたかも既に明らかなものであるとして宣伝しているものがあると警告しています(中には、既にかなりポピュラーなものも含まれています)。それに対して本書は、情報の出所を明らかに、分かっていることと分かっていない(まだ不確かな)ことをはっきりと区別しているため、読者が安心して読める構成になっていますね。また、読後になって思えば、ここまで実績を残した先生が、十分な質・量のエビデンス(根拠)をベースに反論、疑問を呈すれば、それに対して再度異を唱えられる人はいないでしょう(もちろん、現時点では明らかになっていない、というものも含まれていますから、今後の研究次第では、仮説が事実として証明される可能性があるものも含まれていますが)。

実は、不明点を明らかにしなかったり、不確実なものを確かなものとして示すことは、必ずしも意図的に行われるとは限りません。自分の勉強・研究のために資料を読んでいて、分からないところはとりあえず後にまわしておこう、と思ったまま忘れてしまったり、とか、ここはまだ明らかになっていない、という部分を、知らない間に真実として勘違いしてしまったり。もしくは、参考としていた資料自体が”信用に足るものでない”という場合もあるでしょう(ネットで資料を調べている時には、非常によくあるので注意)。例えば一つの論文でも、論文誌、ジャーナル(Journal)として発表されているものは、それなりに専門家の審査を受けているので信用できると考えて良いでしょうが、学会発表の論文の場合、ものによってはほとんどの審査を受けずに公表されているものが少なからずあります。場合によっては、大学生等が自分の課題として発表した資料をネット上にアップしているものも、見た目上はそれっぽい資料に見えてしまいます。

「データはウソをつく」のエントリとも関連しますが、正しい情報を得る、ということは、現代ではかえって難しくなっているのかもしれません。今回紹介した2冊は、著者が知る現状での事実、現在の仮説、そして課題が明確に区別され、非常に分かりやすく記述されているという意味で、工学系、科学系に携わることが多いであろう皆さんにとって、資料作成の際の手本になる良書だと思われます(あまり内容には触れていませんが、内容的にも非常に面白い本です。ただ、個人的に一番印象に残ったのが上記の点だったのです)。課題でもレポートでも卒業論文でも、自分で文章を書く際には、”どこまでがこれまでの成果で、どこからどこまでが自分のやった(考えた)ことで、どこからが不明点(課題)なのか”を明らかにすることが、資料が資料たる価値を持つ最低限の条件です。

最後に、本書に関する感想をもう少しだけ。
この本のタイトルですが・・・若干浮いているような感がありますね。確かに自分自身、最初に目に留まったのはタイトルなので、ネーミング勝ちではあります。続巻が出るくらいなので、それなりに売れている本であるのでしょうが、この本のタイトルが「バカ~」でなければ売れなかったのかなぁ。
インパクトのあるタイトルだからこそ、書店に平積みされることになったのでしょうが、タイトルと内容がズレているのは、本当のところはマズイのではないかと個人的には思います。そもそも本の内容自体、頭の良し悪しではなく、脳の良し悪しを論点にしているのですからね。タイトルだけを見て、試しに買ってみる人もいれば、逆にタイトルを見るだけで買うのを躊躇する人がいそう。中身をある程度読めば、タイトルと内容がズレていることが分かるのですが(そういう意味で、資料作りの際のタイトルネーミングのセンスとしては、本書を参考にしない方が良いかもしれません)。

2010/06/21

つばめ

W杯もゆっくり見ていられないほどの忙しさで、こっちもすっかり御無沙汰です(およそ3週間ぶり)。
まぁ、このくらいはいつものことと思っていて下さい。

さて、W杯以外で最近ちょっと気になった話題と言えば、


一時期、事業仕分けで話題となったスーパーコンピュータとは別のスーパーコンピュータですね。開発費用も維持費用もかなりかかっていますが、個人的に、科学の進歩にこのような”投資”は必要だと考えています。某与党の議員さんが言った、”一位でなければいけないんでしょうか”という質問については、いけなくはないだろうけれど、一位になる努力はし続けなければいけない、と思います。ただ、あくまでも我々国民の税金が使われる事業ですから、それが正しく、かつ、効果的に利用されているかは定期的に調査されるべきで、現状もしくは今後に見合わない状況であれば適宜修正していくべきものとも思います。

話はずれましたが、このスーパーコンピュータ、

理論性能は163.2TFLOPS、実効性能は87.01TFLOPSにまで引き上げられて現在に至る

そうです(TFLOPS = テラフロップス:1秒間辺りに可能な浮動小数点演算の回数~興味のある人は調べてみて下さい)。そんなにお金をかけてこんな高性能なコンピュータを何に使うのか、という疑問もあるかもしれませんが、必要ですね。計算速度の飛躍的向上によって、今までは不可能とされてきた計算が実行可能となってきた過去があります。かくいう私の研究も、多分10年前、20年前では計算に時間がかかり過ぎて実用的でないと結論付けられたかもしれません・・・が、現在では(家庭用とは言わないまでも)一般に購入できる計算機で”現実的な時間で”計算可能になっていますから。

結局のところ、開発費がいくら、とか、性能がどうだ、とかいう議論は、このコンピュータが生まれたてで、まだ何も成し遂げていないから騒がれるものだと思われ、これを使った大規模計算によって画期的で我々の生活に役立つような成果が得られれば、評価は自然とついてくるのでしょう。そういう意味で、せっかく開発された高性能コンピュータ、様々な用途でどんどん活用して欲しいものです(僕も使いたい)。
報道への希望としては、完成したことでニュースは終了ではなく、それがどんなことに役立ったのか、今後どんなことに役立ちそうなのか、といったところまで伝えてほしいですね(使う側が、一般の皆さんに対して発信するという姿勢も必要でしょう)。リンクタイトルにもなっているように、多くの苦難を乗り越えて地球帰還を果たした”はやぶさ”が良い例です。

2010/06/03

根本は同じ

現在、東京高専は試験期間中ですが、ここぞとばかりに授業のない午後に会議が詰め込まれていて、結局普段以上に忙しいのでは、と言った状況の中でも、読書は細々と(苦笑)続けています。
やっと読了したのが、

プロ技術者になる!エンジニアの勉強法(菊池正典 著)

就職したらみんなプロにはなるわけですが、ここで言う”プロ”とは、ただ言われた仕事を淡々とこなしながら日々無為に過ごすような指示待ちサラリーパーソンではなく、自ら貪欲に知識を収集し、周囲の人と協調しながら積極的に情報発信し、決して専門バカではない自律した”エンジニア”のことを指しているのでしょうね。
研究者も技術者も、(最)先端の技術を常に吸収し、かつ、それを活かしていかなければいけないという意味ではベースは同じ。ただ、知識や技術を吸収する方法には類似した部分もあるものの、やはり「ならでは」のやり方もあるようです。特に、ジェネラリストかスペシャリストか、という問題については「V字型エンジニア」という考えが提示されたり、新しい知識の入手法や英語の勉強法、周囲の同僚や上司、部下との付き合い方まで、非常に幅広く、かつ、最低限抑えておくべきノウハウが詰まっているように思えます。

著者が高等教育・研究機関を経験していたら、もっと包括的な話題も提供できたかもしれませんが、少なからず高専、大学関係者が読んでも、このような技術者を送り出したい、という意味で参考になりますし、学生のみなさんが今後就職するにしても、さらに進学するにしてもやはり参考になる情報が詰め込まれているという点で、読んでおいて損はない本でしょう。

最後に、本書後半には”シーズ志向”、”ニーズ志向”といった用語が紹介されています。これらはマーケティング用語らしいのですが、まさにこれらはそれぞれ、提案型、課題解決型、等という言葉で表現される研究のアプローチに類似するところがあります。本書では新たにウォンツ志向と呼ばれる用語が用いられていますが、これは提案型の発展形ですね。ただ、敢えて新しい用語を用意するほど、エンジニアにとってウォンツ志向は大事なものだということを、筆者は主張したかったのでしょう。

試験期間中にはさすがに無理かと思われますが、試験が終わったら、皆さんには是非読書にも力を入れて欲しいと思います。本を読みましょう。読めば読むほど教養と文章力がつきます。試験の問題分が多少長くても、どこが重要なのか一発で理解できるようになります。

2010/05/31

収支

今日はちょっといつもと違う話を手短に。

本日、今月初めに受けた健康診断の結果が来ました。これまでの診断では悪いところも疑わしいところもなかったのですが、今回は、中性脂肪の項目が"C"(要経過観察、生活改善)に・・・

自覚はあります。運動(週約4~5回)してカロリー消費しているとはいえ、それにもまして摂取しているカロリーが多すぎますからね。ただ、実際に診断の項目としてマークされると、さすがにちょっと気をつけないと、と思います。本学科某先生のように、僕も本格的にダイエットしようかしら。と言っても、基本線運動はしているので代謝は良い訳で、これまたやることは分かっています→○○を取らなければ良いだけ。

一カ月くらい○○断ちしてみましょうか。一旦止めると継続するのは比較的簡単なんですが、スタートの時点で宣言しておかないと始めにくいので、敢えてここで宣言。明日からスタートします。
何故明日からなのかは、聞かないでください。

2010/05/26

まとめるのも大事だけれど、「発信」するのも大事

最近、忙しくてなかなか更新するのが難しかったのですが、偶然(笑)良さそうなWeb記事を見つけたので紹介します。これは、実質このブログの一発目のエントリの内容にもつながるところがあるかと思っています。


最近、どうやって情報をまとめるか、とか、どうやって”ちゃんとした文章を書くか”と言ったことにばかり気がいっていましたが、もちろん、社会に出れば(or 高専や大学の高学年になれば)、パワーポイントやKeynote(Mac)などを用いて口頭で発表する機会も増え、その重要性もウェイトを増していくことでしょう。
最近思うのは、パワーポイント等のソフトウェアを用いて資料を作った段階で、発表が8割がた終了した、と思っている学生の多いこと。重要なのは、素晴らしい資料を作ること、ではなく、聞いた人にとって身になる(or 聞く人が目標を達成できる)発表をすることなのに、何故か”枝葉”にばかり意識が行って、結局伝えたいことが伝えられない人が多かったり。

そういう人にとっては特に、5分で「伝えたいことを何としても伝える」という制約はむしろ、良い方向に作用するように思います。

2010/05/17

卒論から報道まで

某TV番組などで、”何かを調べる”といったコーナーがある時、個人的な意見ではありますが、そもそも”先に答えありき”なのではないかと訝ってしまうことが少なからずあります。
何故かというと、一見アンケート等の一般的な手法を使い、いかにも多くの人から広くデータを集めましたよ、というポーズをとりつつも、そもそも質問の内容が明らかに回答者を”ある方向”に導こうとしている内容であったり、答えが複数考えられる質問であったり、場合によっては質問対象となっている人が明らかに偏っていたりするからです。

でも、多くの人は一般的に、アンケートを取った、という事実だけを見て、それならこの結果は納得だ、と思ってしまうんでしょうか?
意外とこの手の調査は頻繁に行われ、かつ、場合によっては結構シリアスな調査でも同様の疑問を抱くことが少なからずあります。

データはウソをつく(谷岡一郎 著)

この本はまさに、この手のアンケートの”裏”や、アンケートの取り方の間違いについて書かれた、非常に興味深い本です。
そもそもこの本は、我々がアンケートを取ったり、実験データを記録したりするとき、どのような取り方をすべきなのだろう?ということを改めて考えるために購入した本なのですが、読み進めて見ると、世の中では非常に多くの場面で”データがウソをついている”ことがあると認識させられました。

例えば我々が(シミュレーションも含めた)実験をする時、出て欲しい結果とは必ずしも合致しない結果が出ることがあります。このような時、我々は何故そのような結果が出たのかを考えながら、当初の仮説を修正するのか、それとも、今回のデータはあくまで例外として扱えるのかを考えることになります、通常は。
ここで、時間やお金、その他諸々の理由で、データは出てしまったけれど隠してしまえ、データの数値を書き換えてしまえ、となると明らかに犯罪となります(100歩譲って犯罪とはならなくても、倫理的にあ大いなる問題となり、場合によっては科学の進歩を大きく遅らせることになります)。
結構最近、韓国でもクローン技術関連で大きく話題になりましたね。

そこまで大きな問題とはならなくても、データの取り扱いには十分注意する必要があります。場合によっては、当事者が意識していないうちに、データの良い面しか見ていなかった、良い結果が出るようなデータの集め方をしていた、という場合もあります。
本書の前半は、特に、得られたデータにウソをつかれない方法や心構えが記述されているので、特にこれから実験を繰り返してデータ収集と評価を行う人にとっては非常に勉強になる内容が含まれていると思います。

上記のような、一部不可抗力的なデータのウソではなく、敢えて”データにウソをつかせる”ような方法も存在しています。冒頭にも書いたように、質問の仕方に何らかの意図があったり、質問を投げかける対象が明らかに偏っている場合、というのがそれに当たると思いますが、それらについての記述があるのが本書後半となります。
詳細については省略しますが、情報化社会と言われて久しい現代、自分にとって必要な情報をどう見分けるかも重要ですが、得られた情報がウソを含んでいないか吟味して、対象の真の姿を知ろうとすることも重要な姿勢だと思います。
そしてこのような”データのウソを見破る””誰が見ても納得するようなデータを示す”能力は、技術者や科学者が絶対に身につけていなければいけない能力でしょう。僕にその能力が十分に備わっているとは思えませんが、少なくとも、人にウソを教えるようなことだけは避けられるよう精進していかなければいけませんね。

2010/05/12

日本の未来

人類にとって21世紀は希望のある社会になっていると思いますか?

なかなかドキっとする質問から始まる本

科学技術は日本を救うのか(北澤宏一 著)

は、GW中に読了しました。冒頭の質問は、1999年に米、中、韓、日の高校生に対して実施された調査の中に含まれていたそうです。結果がどうなっているか、実際に興味のある人は本書を読んでもらうとして、この本は、研究、産業、双方の面における「科学技術」が、今後の日本の行方にどれほどの影響を与える(と筆者が考えている)のかが述べられています。

第一章では、日本の科学研究の現状が、世界の主要国との比較をもとに記述されています。著者がJST(科学技術振興機構)理事長であることもあってか、悲観的な部分もありつつ、かなり楽観的、というか、”未来は明るい”といった論調での記述が印象に残りますね。もちろん、それなりの根拠も併せて示されていますから、そういう意味では非常に勇気を持たせてくれる内容、と言っても良いでしょうか(最近、その手のニュースが少ないから、かえってこのくらいで良いのかも)。

ただ、第二章、第三章と進むに従い、本の内容が科学技術云々と言ったところから、日本が低迷するに至った構造的問題や、その問題を解決するための取り組みに関するところへシフトしていき、ちょっと本のタイトルからは離れてきている?といった感想も抱きました。ただ、原因を分析しない限り、科学技術であれ観光であれ、何を手段としても日本の再生はない、ということなのでしょうね。

第四章では、それでは、日本を担う若い世代の人にどのような道を示すか、といった内容になっているのですが、ちょっと他の章と比べてボリュームが少ないかな、という印象が。
この本のハイライトは、やっぱり一章でしょうか。知っている情報も少なからずありましたが、かなり知識が整理されます。また、三章に記載されている”第四の価値”(第4次産業)という考え方も、なかなか斬新で面白いと思いました。

2010/05/10

過去の栄光ではありますが

リンクがまださびしいので、東京高専の皆さんの先輩の活躍をPRする(&顧問の同好会をPRする)目的で、一つリンクを追加しました。
関係者の皆さんは既にML経由で知っているかと思いますが、昨年千葉県木更津で開催されたプロコン2009課題部門で最優秀賞を受賞し(その他いろいろ受賞しました)、その活躍が認められてITジュニア賞を受賞したメンバーの記事です。

今年は高知県での開催です。昨年の成果は成果として、また新たな気持ちで全国大会進出へ向けて頑張って欲しいと思います。

2010/05/07

世界へ羽ばたく研究者に

さて、会議が終わりました。

ゆっくりとではありますが、ボチボチtwitterのfollowerが増えてきたので、こちらのサイトの存在も明らかになりつつある様子。それはそれで更新せなあかんがなという話でちょっとしたプレッシャーではありますが、その分、読書のモチベーションにもなるのでまぁ良いかと。

と、言っておきながら、今回はいきなり少々手抜きです(笑)。本というより雑誌の一記事を紹介します。雑誌名を人工知能学会誌と言います。まず、学会誌と呼ばれるものについて説明しましょう。多くの(我々のような高専教員を含む)研究者は、何がしかの学会に所属しています(僕の所属学会はこちらを参照)。もちろん、基本的には自分の研究分野に関連する学会に所属します。所属すると、特典は学会によって様々ですが、分野に関連する雑誌が送られてきたり、論文誌が送られてきたりします。学会誌と論文誌は通常異なっていて、論文誌ではまさに、研究者が自身の研究成果をまとめた”論文”を投稿し、他の研究者による審査(査読と言います)に通る(これをAcceptと言います)と掲載されます。今回は、論文誌ではなく、人工知能学会誌の一記事を紹介します(ちなみに人工知能学会は、会員でなくても論文誌をオンラインで無料公開しているという太っ腹な学会です。AIに興味のある人は覗いてみると良いかも)。

紹介するのは、人工知能学会誌 Vol. 25, No.3「日本人研究者が世界で活躍するために」という記事。最近では事業仕分けに関連して、日本の科学技術振興のための施設が云々、などという議論もよくニュースになりますが、いかんせん、単純な”インパクトレベル”で比較すると、日本は世界(ここでは主にアメリカ)に劣っていると言わざるを得ません。その理由は、皆さんの多くは苦手としているであろう、言語(英語)によるものです。研究世界の共通言語は、分野に関わらず英語です。もちろん、最新の研究論文も英語で発表されます。日本の研究者が優れた研究をしても、それを海外の優良な論文誌(Journal)に発表しないことには、誰も(と言っても過言ではない大多数の研究者が)それに触れることができない訳です(ちなみに僕は高専卒ですが(?)英語は大好きです)。

本記事にも、それと同様の事が書かれていて、それに加えて世界(米国)と日本の研究環境の違いが述べられています。記事を読めばすぐ、”それは著者がその環境にいるからそう思うのでしょう?”といった感情が湧いてきます(注:著者は日本人ですが、現在アメリカスタンフォード大所属。同時に日本では東大所属なので、要はスタンフォード(in シリコンバレー) と 東大(in 東京)の違い)。ただ、読み進めるにつれて、一理あるなというようにも感じてきます。
二つの国(大学)の環境の違いを、筆者は各小節で以下のようにまとめています。
  • 天気
  • 言語
  • 世界中の知を輸入するアメリカの科学技術政策
  • 明確な人事評価と雇用の流動性
後半の二つ辺りは、それこそ先ほどの事業仕分け辺りとも関係してきそうではありませんか?
そして、まとめの一つ前で、”日本人研究者が世界で活躍するために”として筆者なりの考えが著されていますが、個人的には同意できる部分がかなり多くありました。特に印象に残った一部を抜粋します。
英語の克服法であるが,地道な積み重ね以外に方法はない.(中略)最終的には自分のすべての研究成果を国際会議,英語の論文誌への投稿につなげると強く意識する意外に方法はない.(中略)ときにはうまくいかないことも出てくるであろう.そんな場合は,仮に一旦撤退することがあっても,また次のチャンスが回ってくるはずだと信じ,楽観主義でいることこそが重要であると思う.
大学への編入学,さらには(もしかしたら存在するかもしれない)研究者への道を模索している皆さんは,興味があったら読んでみることをお勧めします(例によって,僕の部屋に来れば貸します).
もちろん,編入を考えていない学生にとっても,世界で活躍するエンジニアを目指す人や,アメリカと日本の文化の違い等を”てっとりばやく”知りたい人にはお勧めできると思います.
いやいや,そもそも高専は即戦力の技術者を養成する教育研究期間だろ,という突っ込みもあるかと思います.次回は,”エンジニア”にとってためになる本を紹介したいと思います(もちろん,学生生活の参考にもなります).

P.S. 意外と長文になったなぁ.推敲してないので誤字があったらすいません.

2010/05/05

第4弾は・・・

実は今日の午後、高専の僕の個人HPにこのブログのリンクを張りました。
ということで、本当に本格的にオープン(行き当たりばったりでURL入力して偶然このブログにぶち当たるという奇跡を経なくても辿りつけるようになったという意味で)した訳ですが、実際、一切の”広報活動”を行わない場合、どのくらいの人がここを見てくれるのかが興味深くもあり不安でもあり。

もし、ここを”発見”した人は、何らかの足跡を残しておいてくれると嬉しいです。とか言って、1カ月経っても誰も見ていないようであればさすがに悲しいので、密かに(?)広報活動しながらエントリも上げていこうと思いますが・・・

ちなみに、リンク(本ブログ左端下半分以降あたり)に載せた二つのサイトのうち一つは、つい先日オーストラリアに旅立たれた本学科の小嶋先生のブログです。リンク先では、海外在住の間はお休み、とのエントリがありますが、そのエントリからリンクを辿ると”メルボルン編”のブログへと飛べます。小嶋先生のブログは、良い意味で随分気楽な内容になってますね。これはこれで非常に面白いと思うのですが、こちらまでそんな内容にしてしまうと”共存”が困難になりますので(?!)、当面は若干硬派な内容で行きたいと思います。

もうひとつのリンク先は、既に書籍化されている、理系白書の著者、関係者の方のブログです。

本オープン?

ゴールデンウィークの最終日になりました。この連休中、小旅行に行ったり買い物したり、いろいろやりましたが、もうひとつ充実していたことと言えば、”本をたくさん読めた”ことでしょうね。

実際のところ、自分が予想していたほどには読めなかったので少し残念ではあったのだけれど、現時点で4冊ほど(3冊読了、2冊は途中まで)読みましたね。

一冊、面白かった本を紹介します。

「話す」「書く」「聞く」能力が仕事を買える!
伝える力 (池上彰 著)

プレゼンテーション能力については、僕に限らず多くの教員から色々と注意されている高専の皆さんだとは思いますが、我々のような(?)立場の人に言われるより、池上さんのような、TV等で実際に活躍されている人から実例を交えて説明された方が自分のこととして捉えられるのでは、とも思います(※:知らない人のために補足・・・池上彰さんは、長らくNHKの”週間こどもニュース”を担当され、現在でも民放TV局で多くの番組で、ニュースを分かりやすく伝える仕事に従事されています:例えば今日も「そうだったのか!池上彰の学べるニュースSP!!」なんていう番組が)。

池上さんは、大きく分けると(本当は好きな分け方ではないのですが)文系の方でありますので、我々のような工学系、理系の文章作成、プレゼンテーションとはアプローチが必ずしも一致しない部分があるのですが、「伝える」という意味では、まさに僕の言いたいこと、考えていることを過不足なく代弁してくれているように思え、読了して嬉しくなるような本でした。

もちろん全部すっかり読み切って欲しいですが、基本的には1章と5~8章を読んでもらえれば、エッセンスは抽出できると思います。
読んでみて、印象的だったフレーズを二つだけ書き出します。興味のある人は読んでみて下さい(一冊だけなら、僕の手元にあります)。

”深く理解していないと、わかりやすく説明できない”
”パワーポイントを作ること自体が目的になっている人が多い”

2010/04/30

仮オープン

東京高専 情報工学科の北越です。
ゴールデンウィーク明けから本格スタートと思っていますが、エントリがいっこというのもさびしいのでエントリを追加してます。

ヘッダに書いてある通り、更新頻度は(ご存じの通り)仕事の忙しさに大いに依存するので決して高くはならない予定ですが、研究関連とか、読んだ本とかの話(特に技術書、理系関連の雑学書、スポーツ・料理関連の書籍等)について書いて良ければと考え中。

この連休も、久しぶりに”ちゃんと休めそうな休み”になりそうなので、買うだけ買って全く読めていなかった書籍を持って帰ってきました。最初に読了したのは、1週間くらい前からちょびちょび読み進めていた

ロジカル・シンキング(照屋華子・岡田恵子著、東洋経済新聞社)

です(リンクは張るまででもないですね。ググればすぐ出ますし、興味のある人には貸せます)。
情報の5年生以上なら、プレゼンスキルの講習資料(DVD)で、似たような内容を見た記憶があるかもしれませんが、より体系化された、論理的なものの考え方、相手を納得させる話の組立て法などが述べられています。ビジネスパーソン向けの書籍のため、例題が商談やプロジェクトに関するものなのですが、スキル自体は我々のプレゼンテーション技術向上にそのまま応用できます。
感覚では分かっていても、人にはなかなか説明出来ない部分を、随分分かりやすく体系立てて説明してくれている、という意味では有難い本ですね。

この連休中、できればあと3,4冊は読みたい。

あ、そうでした。最後に、実はひそかにtwitterも始めました(このブログのサイドバーにもツイートの履歴が載ってます)。でも、残念ながら学内回線ではアクセスできないのですよね・・・。まぁ、しょうがありません。こちらはブログほど低頻度にならないかと思います。アカウントはdkitakosiです。

2010/04/28

開設準備

とりあえずアカウントだけ作成してみました.
本格的オープンは連休後,ということにする予定.
@dkitakosi からのツイート