2011/03/21

地震から10日

東北・北陸を中心に,関東地方にまで被害を及ぼした(及ぼしている)東日本大震災が発生してから10日が経ちました.本校学生,教職員への被害が(健康面で)最小限だったことが不幸中の幸いではありますが,日が経つに従い,その惨状には目を覆いたくなるばかりです.

この震災について振り返ったり,批判したりするのは時期尚早でしょうが,現時点で実感していることを一つだけ書き残しておきたいと思います.
それは,我々工学に携わる人間は,

”科学を一般の(普段科学や工学に触れることのない)人々にもっと分かりやすく伝える必要がある”

こと,そして,

”そのような人々に科学・工学への親しみをもっともってもらうことをもう一つの使命とすべきだ”

ということです.

現時点では詳細なこと,正確なことはいえませんし,僕も決して専門家ではありませんが,多くの人が原発(=放射能)に対して抱いている不安より,多少の知識がある我々のほうが,少なくとも冷静に事態を観測できていると思います.そもそも,マイクロとミリがどのように違うのかさえ,一般の多くの人には理解しがたい部分があるのです(我々がそのようなことでは,学生なら専門の単位が危なくなるでしょうが).知識がないことが,さらなる不安をあおります.たとえ大変な状況であっても,知識があれば,もしくは自分の持つ知識を使って予想(想像)がつけば,パニックになることはないと思います.

日本は科学技術立国と言われて久しいですが(既にその神話は崩れつつあるという話もありますが),科学・工学の専門的知識と,一般社会での生活の間に大きな溝があることを,我々は見てみぬふりをしてきたように思います.正しい情報を伝えることは当然ですが,その情報を,本当に分かりやすく伝えるためには,当事者にそれなりの知識と,分かりやすく伝えようとする意思や工夫が必要です.
日本の将来を背負って立つ皆さんには,知識をしっかりと身につけ,それを応用する力が必要なのは言うまでもありませんが,さらにもう一歩踏み込んで,それら知識や技術が一般社会から”浮いて”しまわないよう,我々を含む全員にとって身近なものとして捉えられるよう表現する能力も身に着けて欲しいと思います.

今後,復興に向けて我々をはじめとする多くの国民が選択を迫られる場面が多々あるでしょう。そのようなとき,例えば身近な家族や友人に,現在の状況がどのような状況なのか,我々が持っている科学的,工学的知識とコミュニケーション能力を駆使して,分かりやすく伝えることができれば,それは人々の不安を取り除き(もしくは,状況を正確に把握することを助け),より多くの人が,より適切な判断を下すことの助けになることは確実です.学校での勉強とは違いますし,ある意味,学校での勉強より,学会での研究発表より難しい課題であるかもしれませんが,取り組むに足る重要性のある課題であると考えています.

あくまでも個人的な意見でありますが,このブログを読んだ皆さんには,自分自身で一度,考えてもらいたいことです.
@dkitakosi からのツイート