2021/06/21

文章作成の際のページ制限について(for beginner)

 5月末辺りから猛烈に忙しくなってきて,ものの見事にBlog更新頻度が下がりましたが(苦笑),幸か不幸かある意味予想通りだったので持ち堪えられています(来ると分かっていれば,心も体も意外と準備できるもの).
そんな昨今ですが,うちの学科の5年生が中間報告書の作成のタイミングとなり,これはちょっと書いておくかということで久しぶりに書きます.ちなみに今回のネタは,この夏休みに各企業様にお世話になり,夏休み明けに報告書を書くこととなる高専4年生(東京に限らず,インターンシップを行う高専は同様でしょうか)にとっても大事な話かもしれません.

何かについて文章でまとめよ,という場合,そのほとんどで”何ページ以内”といった制限がつきます.ページ数が少なくて喜ぶ人は,文章作成経験が乏しい人か,そのことについて真面目に取り組まかったために書くことがない人か,その両方です.”いくらでも好きなだけ書いていいよ”と言われた場合が最も楽勝で,逆に極端な話”今回のテーマについて一言で”とか,俳句(原則17文字)で表せ,という方が難易度が高いと思いませんか?(Twitterは140文字でしたっけ?結構少ない文字数ですが,あれで言わんとしていることをしっかり表現しきっている人ってほとんどいないのではないでしょうか?結果として,意図が正確に伝わらずに=誤って伝わって要らぬ騒ぎが起こったりしているような・・・Twitterユーザの全員に文章力があれば,また,しっかりと推敲した上で投稿していれば,勘違いや意図を伝え損ねての問題はぐっと減って幸せな世界になると思います)

話がそれましたが,書くべきことがそれなりにあるのに,それを少ないページ数でコンパクトにまとめて表すことの方が,好きなだけ書いていい,とか,何ページ以上書いてと言われるよりも大変そうだということがイメージしてもらえたでしょうか.
少ないボリュームでまとめること自体,そもそも難しいのですが,それに加えて特に文章作成経験の乏しい人や,これから書こうとしている対象についての知識が乏しい人が苦戦するのが,“そもそも何を書くべきか”を取捨選択することです.

報告書などのフォーマルな文章の執筆初回(or 数回の経験)で,これをいきなり過不足なく,かつページ制限を守って書き切れる人には会ったことがありません.むしろ最も多いパターンは

”書かなくても良いことをあれこれ書き,書かなければいけないアレコレが抜けている”

というものです.で,これも最初のうちはしょうがない面があるのですが,多くの皆さんにとっては「この資料は何ページでまとめよ」という制約が猛烈に大事”であるようで,要らないコンテンツが大量に含まれている上に必要なコンテンツが複数抜けているのに,丁寧に時間をかけてページ数の制限「だけは」守って提出してきてくれます.

・・・が,当然その文章は猛烈に無駄が多く,加えて必要なことが抜けているので,ほぼほぼ全部書き直す,といったような事態に陥ります.報告書にせよ何にせよ,ページ制限がある,提出締切もある,といった文章を作成する必要があり,かつ,そういった文章作成の経験がない場合,まずすべきことは

“これまでの自分の知識と経験を総動員して
「この文章に関してこれが抜けると,この文章の真意が伝わらない」
というコンテンツを全て文章に盛り込む”

ことです.当然,これまでの文章作成の場数が少ない場合,やはりそれでも重要なものが抜けたり,(最重要なものと比較して)要らないもの無駄なものがリストアップされたりしてしまいますが,場数を踏んでいくごとにだんだん,文章の骨格を作るために必要なコンテンツを過不足なくまとめられるようになっていきます.

その際,重要なことは,多少無駄なものが含まれるかもしれないが,“リストアップしたコンテンツの中に,絶対に必要なコンテンツが含まれること”です.文章内にそれらが含まれていて,願わくばそれが理解しやすい(理解可能な)流れや表現で記述されているのであれば,あとは不要な部分を削るだけです.特に初心者の場合,この訓練を積む過程では,文章作成のバージョン1(初版)からしばらくの間はページ制限よりも当然,文章がオーバーしますが,むしろそれで良いのです.初版の文章の中に必要なコンテンツが全て含まれていて,あとは削るだけ,なんていう文章を書いてくる学生がもしいたら,僕は感動して泣くかもしれません(大袈裟でなく)・・・というくらい,経験を積まないと難しい作業だと思います.

もちろん,ページはオーバーしてOKとはいうものの,2ページが上限の文章で初版のボリュームが4ページ(2倍)あるとなると,さすがに書き過ぎでしょうとなりそうですが,1.5倍くらいまでであれば(個人的には)全くもって許容範囲ですし,制限内におさめるというプレッシャーからは解放されるという意味でも良いかもしれません.
加えて,せっかくぴったりのページ数に収めて提出したのに,あれもこれも要らない,という一方,あそこもここも足りない,と言われてほとんど全部書き直せと言われるショックも多少は回避できるように思います.

今から自分が書こうとしている文章についての背景知識や文章作成スキルが不足しているという自覚がある場合は,そもそも最初から”一度に1から10まで全部書き上げよう,としない”ことも重要かもしれません.例えば,文章の序盤で致命的なミスを犯している場合,それ以降の当該箇所や,当該箇所と関連している部分は全部直さなければいけないことにもなります.あまりにも記述量が少なすぎるとコメントの出しようがない,という意味では「過ぎたるは及ばざるが如し」ですが,例えば1節程度のまとまりができた時点で見せてもらえた方が,早い段階で軌道修正ができるのでベターなように思います.

以上,僕がこれまで,多くの学生が文章作成初心者だった時分に彼らの文章添削をしていて思ったこと,および実際に指摘してきたことを踏まえてオススメしている”初心者の文章作成アプローチ”です.ただしこれはあくまでも「北越が考える」アプローチで,別の方には別の方のアプローチがあり得ます.また,上の方法がどうにも自分の文章作成法には合わない,という人もいるかもしれませんので,強制はしません.が,僕が人の文章を見るときは,上のような見方をしますので,近日僕に文章をみられることになる5年や4年の学生は,上記の内容を確認の上,試しにこの方法を意識して作ってみると,少なくとも僕とは相性が良くなるかもしれません.

@dkitakosi からのツイート