2021/08/19

Social Innovation

5月末にアップした読書記録のうち,読了していない2冊(FACTFULNESSとサーチ・インサイド・ユアセルフ)は実はまだ読み終わってないんですが,とは言え読むのをやめたわけではなく,”細々と”読んでます(読み応えがあるのと,内容はしっかり頭に入っているので,このままマイペースで行くか,と).
そんな中,子供たちが図書館に行くってんで着いて行ったら比較的面白そうな新書があったので適当に2,3冊見繕って借りて読んでいたら”当たり”に遭遇しました.

「世界を変えるSTEAM人材 シリコンバレー「デザイン思考」の核心」 
ヤング吉原麻里子,木島里江 著 朝日新書

借りておいて言うのもなんですが,STEMはある程度知っていたものの,実はSTEAM(要は、STEM + "A")はよく知りませんでした(だから借りたという話もある).STEMは

Science,Technology,EngineeringにMathematics

の略ですが,このワードを見て,日本で言うところの理系を思い浮かべるのはあまりよろしくありません(と言うのが個人的な見解).そもそもが理系/文系のように,簡単に学問領域を一刀両断になどできるものではない=各分野が相互に影響を与え合っているのが実際の姿,というのが僕の考えですが,STEAMはまさにそれを体現していると言えるかもしれません.で,追加されたAですが,これは”Arts”.ただし,日本人が一般的にArtに対して思い浮かべる「芸術」と言うよりはむしろ”リベラルアーツ”(これまた日本語訳にはめるとちょっとズレてくる感がありますが,いわゆる教養科目)といった方が妥当で,いわゆる数理的,工学的なスキルを,実際に人間の生活を向上させるため,困っている人のニーズを満たすために使っていこうとするために必要な能力を学ぶ,もしくはそういった能力を有した人材をSTEAM(人材)と呼ぶ,とのこと.

この本を読んでいて図らずも感じたのは,東京高専の“社会実装プロジェクト”導入の資料としても良い書籍なのでは?ということ.本のサブタイトルともなっている,いわゆる「デザイン思考」というのは,ウチの社会実装プロジェクトのカリキュラムを検討する際にもキーワードとして出てきていた用語ですが,この書籍を読んで,より具体的にイメージができたと思います.

率直に言って,社会実装に限らず,教員や職員がどれだけその科目について方法や目的を把握していても,授業を受ける学生が“何のためにこの(こんな?)授業を受けるのか(受けなければいけないのか)?“を理解できていないと十分な学習効果が得られないのではないかと思っていますが,特にここ最近で授業化された社会実装系科目は,特にその傾向が強いように思っています(実の所,社会実装は教員間でも捉え方やイメージ,到達目標にずれがあるのではないかと感じています).

この本は,東京高専における社会実装に特化した内容では当然ないですが,

・社会のニーズを吸い上げ
・ニーズを持つ当事者とのやりとりを通して
・プロトタイプの作成とフィードバックを経て
・実践的なものづくりを進めていく

という,東京高専における社会実装にもフィットした“STEAM人材育成”のエッセンスや他の機関における実例が紹介されているので,なるほど東京高専でのこういったことをやりたいと思っているのか,といったイメージがつけやすいように思いました.

冒頭に書いた通り,実は現在,読んでる最中だけれど読了していない本もある中で,この本は新書という形式もあり(&図書館で借りた本なので返さないかんこともあり),かなり短時間で,気軽に読めるのも良いですね.

最後に1つ,この本の中でも序盤で,これはまさに社会実装に取り組む際に重要なスタンスだな,と僕が常々考えている“イノベーターのマインドセット”(マインドセット=ものの考え方、心構え、姿勢)が紹介されているので、それを引用したいと思います.

① 型にはまらない think out of the box
② ひとまずやってみる give it a try
③ 失敗して、前進する fail forward

個人的には特に3つ目が重要だと考えています.企業や組織との連携も積極的に行われている科目なので、連携先のスタンスによっては失敗に対する捉え方が変わってくる可能性もありますが、社会実装の科目自体はむしろ”どれだけ有意義な失敗経験を積めるか”こそが重要だと思っています.取組のフェーズがどの段階か(企画/開発/実証実験/実用化などなど)によっても違ってくるとは思うものの,少なくとも学生の皆さんのための科目として存在する以上,”失敗はできるうちにできるだけしておいた方が良い”でしょう.

ちなみに今日のタイトルである"Social Innovation"ですが、この本の終盤で紹介されているアメリカの,幼稚園年中から高校生までの14年間,デザイン思考を取り入れた未来のSTEAM人材の育成を目指す私立校に実際にある科目名とのこと.東京高専では日本語名が社会実装なので,英語訳は直接的にSocial Implementationとすることが多いと思いますが,語感を見て一発で「こっちの方が格好良いな」と思ったので,エントリのタイトルにしてみました(笑).

2021/08/07

夏”休み”?

 東京高専では7月22日から,学生は夏期休業に入りました(8月31日まで).正直言って,台湾にいた2018年度は除き,いわゆる夏休みに休んだという実感はほとんどないのですが(苦笑),今年度はこれまでに輪をかけてさらに”休んでいる実感がない”夏休みとなっています.

単純に言って,やることが多過ぎます.当然コロナ禍の影響もありますが,担任業務を掛け持ち(!?)していることもあり,学生からの連絡や学生へ連絡するという作業がかなりあったり,そんな中でも研究周りの作業も進めねばならずで,例年よりマッサージに通う頻度が確実に上がっています(ホントに).

7月末,ここ最近では個人的に一番大きなイベントであった,久留米大学さんでの公開セミナーを終え,今度は11月に開催される国際シンポジウム(ISET2021)の基調講演の準備だ,と思っていたのですが,残念ながら単純に時間的な余裕が全くないのでとりあえず放置しています.

今日からうちの学校では,ここ数年恒例の”省エネ期間”(冷房で電気代を食うから全員来るな,の期間)なんですが,学校に行ってないだけでやることはほぼ同じ(強いていうならマッサージに行ったくらい)という感じ.
コロナ感染者数も急増していますので,本格的に休めるかどうかという話はあるものの,少なくともアクティブに動ける状況ではありませんので,ひっそりと過ごしたいと思っています.

インターンシップに参加する学生の皆さんには,せっかくの機会ですので是非貴重な経験を積んできてほしいと思うと同時に,可能な限りの注意をしながら,様々な状況の変化に柔軟に対応できるようなRobustnessも身につけてもらいたいですね.
様々な理由で参加しない(参加できない)学生もいますが,その分自由になる時間は増えますし,否応なしに行動が制限される分,集中して何かに没頭できる面もあるでしょう.ただただ”コロナにやられた年だったと記憶するのは癪”ですので,この機会に何か目標設定して頑張ってみるのも一つの手だと思っています.

@dkitakosi からのツイート