2020/12/28

2020年を振り返って その2の2

前回,遠隔授業について書いていた”その2”の続きなので,”その2の2”とナンバリングさせてもらいました.
前回、今年度の大きな出来事として遠隔授業を取り上げ,1. 準備について、2. 技術面・環境面について考えてみましたが,今回は残る一つとして,以下のテーマを考えます.

3. 来年に向けて

遠隔授業に限った話ではありませんが,恐らくコロナを取り巻く現在の状況は単純に年や年度が変わったからと言って一気に好転するようには見えないので(ワクチンが普及すれば変わってくるのかもしれませんが),それを前提として今後どうすべきか,考える必要があるかと思っています.
今回は遠隔授業をテーマとしていますのでそこにフォーカスして考えると,前のポストでも書いた通り,今年度かなりヒィヒィ言いながら作ってきた授業資料があることが,かなりのアドバンテージとなるのは事実でしょう.もちろん,今年度の学生の皆さんからのフィードバックを踏まえた改良は必須ですし,”どこをどれだけ”変える必要があるかは十分に吟味の上,変えるべきは変え,変えないところは変えずに行きたいと思っています(社会実装とも関連しますが,サービス提供対象者のあらゆる意見を全て聞くこと ≠ 最良のサービスであるところが,難しいところであり,面白いところ).

可能であれば,最も大きく変えていきたいところは,授業を受ける学生の皆さんとのInteractionは,より多様に,かつ頻繁にしたいと思っています・・・が,遠隔授業のプラットフォームでそれを実現する場合,こちら側はもちろん受講側の環境もそのような改善を実現可能なインフラとなっている必要があることが悩ましいところ.一部学生は受講端末がスマホだったりしますので,スマホのような小型の端末であったり,通信環境が必ずしも高速でないような場合でも実現できる方式を用意しつつ,参加者全員の環境がある水準以上である場合には,そのような環境ならではのinteractionの方法も用意しておきたいです.
そう言った意味では,今年度以上に”対話のための選択肢を多く用意しておきたい”というのが,来年(度)の具体的な目標となりそうです.

もしかすると,そんなところ気にしてもしなくても受講する側は関係ない(むしろウザい)と思う学生も少なからずいそうな気がしますが,これまでの経験上,そして現状は決して十分な分量ではありませんが,今年度の遠隔授業で得られたデータをもとに分析すると,実際にできるかどうかは別としても,教員に意思を表明しようとしてくれる学生さんの方が,総体的にみて単位取得に苦労しない(=心配な状況となる前段階で教員が気付ける)印象があります.これは,遠隔/対面に関わらず共通した部分と思う一方,interactionの手段が急激に制限された現在,特に顕在化した一面だと思います.
意思を表明しやすい状況を作ること,意思を表明できる手段を用意しておくことで,多少なりとも授業を受けやすい,研究活動に従事しやすいと思ってもらえるだけで,ストレスは減るのかな,と.

個人的な工夫は必須として,やっぱり組織的な改善も重要だと思っていますが,こればかりは自分一人の意思ではなんともならない部分がありますから,そこは”0ベース”と見なしておき,サポートがあったらラッキー(苦笑)くらいに思っておきたいですね.

取り急ぎここ数週間の間で,ハード面で不安なく授業が実施できるような整備を進め,特に音声入出力と,手書き文字入力の環境を改善できればと考えているところ.ただこの辺りも,実は改良したはずが受講側にとっては改悪になっていた,みたいなことは十分にあり得るので,例えば年明けのある授業で僕が「○○,新しくしたんだよね♪」と言っていたとしても,具合が悪いようであれば「それ,改悪です」と教えてもらえると嬉しいです.

2020/12/26

2020年を振り返って その2

 研究面でのお話をざっくりと前回、記述しましたが、今度は授業関係について.

これはモロに学生の皆さんにも関係する話題ですね.
皆さんにも是非聞いてみたいです.今年の授業はどうだったでしょうか?

どんなことにも良い点,悪い点がありますが,今年度の授業実施形態についてはまさに,様々な視点でその両面があったように思います.
まず,今年度の東京高専での状況をおさらいすると,新年度早々の入学式は中止,引き続いて4月から2ヶ月は対面授業を中止.5月から,一部授業について遠隔授業が始まり,6月に入り対面授業が一部再開(一部は遠隔),後期はこれまで2回臨時休業がありました.

対面授業の実施にも遠隔授業の実施にも様々な立場から賛否両論があるかと思いますが,ここでは個人的な感想と考察,そして来年に向けた将来的な観点で書いてみます.

1.準備について

率直に申し上げて,学生教員双方に,環境面・技術面はもちろん,心の準備という面でも準備は足りなかったと思っています.そりゃそうですよね.前回のエントリで書いた震災ほどの突発性はないにせよ,1月下旬あたりに感染事例が報告され,その後国内で感染者が確認されて以降は文字通り”あっという間”に休業まで行ってしまった感覚ですから,止むを得ない面はあります.
ただその一方,遠隔授業のある面におけるメリットや可能性については議論されていて,遠隔授業の実施を試行しようといった流れはあったものの,何のきっかけもなくじゃぁ遠隔に,となっても中々その流れは進まなかったのでは,とも思われるため,否応なく遠隔授業を実施せざるを得なくなり,やってみたらやはり大変な面はあったものの収穫もあった,という”経験”は非常に重要だと思っています.
個人的には,授業までの遠隔化経験はなかったものの,実はここ数年で課題の提示や収集は徐々にオンライン化を進めていたので(在外研究での海外滞在期間中に準備を進められました),一から十まで一気に遠隔化,というほど大変でなかったことは救いでした.ただ,学生の皆さんにとっては慣れない遠隔授業で苦労した部分がかなり多かったのではないかと思います.ある程度学年が上になると,むしろ”早起きしなくて済む”(苦笑)とか,わざわざ学校に行かずに授業を受けられるというメリットの面もあったかと思うものの,入学早々休業で,授業が始まったと思ったら遠隔で,という新1年生の皆さんは,かなり大変な思いをしたのではないでしょうか?僕は5月早々の1年生向けの遠隔授業も担当したので,そこでの学生の皆さんの困惑ぶりを目の当たりにもしていますし,授業を行う教員の側もかなり手探り状態だった記憶があります.また,学年が上であったとしても,例えばこれまで授業担当などでの付き合いがなく,実質初対面が遠隔授業となると,教員としては学生の顔と名前が一致しない,当然,各学生がどんなキャラクタの学生なのか分からないというのは,非常にやりづらかったです(これは学生の皆さんも同様でしょう.この人どんな先生なの?というのが分からないと,授業も受けづらいのでは・・・).

授業準備も実際大変でした(一部現在進行形)が,これに関しては一度ベースの資料を作ってしまえば,2年目以降の負担はかなり軽くなることが予想できるので,実質”今年度限り”の苦労です.ただ,上述のとおり来年度も新入生は当然入学してきますし,初対面の学生を対象にいきなり遠隔授業,というシチュエーションもあるでしょうから,この辺りを,今年度の状況を踏まえてどうやってスムーズに快適に授業が実施できるか(授業を受けてもらえるか)がカギとなってくると思います.

2.技術面・環境面について

1.で書いたこととも関係しますが,今回は緊急,想定外,かつ,”やらざるを得ない”状況であったがため,当然,技術面・環境面での準備がバッチリ整っていていつでもWelcomeな教員はいなかったかと思います.当然,学科による違いや,文系科目理系科目の違いに加え,教員が教材や授業のオンライン化にどの程度興味があるか(誤解を恐れずに言えば,前向きであったか),実際に準備をしていたか,準備ができる機材的,技術的,時間的,心理的な余裕があったか(あるか)と言った様々な要因で,いわゆるスタートラインがどの程度前後するか,そもそもスタートラインに立てるかと言ったところにかなりの差が生じた印象があります.

例えば,在宅勤務であった場合,自宅のネット環境やPCのスペック,音響設備の充実度はかなり影響がありますし,じゃぁ学内で授業をするとなったら十分な環境が整っているかと言えばそうでもない(苦笑).個人的には,PCのスペック的には(流石に?情報工学科所属ですので)問題はないと考えていましたが,カメラとマイクについてはいまだに十分に満足していませんし,遠隔授業中の”板書に変わる手段”としてのタブレットないしは液タブについては,自宅と学校で格差があります.また,授業資料についてはそれこそ,現在のものが遠隔授業用としてどの程度マッチしているのかは,100%の確信を持っては使用できていませんので,資料の改善はもちろんのこと,インフラ面での改善も急ピッチで進めていきたいと思っています.ただし,これについては教員個人でできることには限界がありますので,学校全体としての環境整備・改善はmustでしょう.

また,当然と言えば当然,学生の皆さんの側も好むと好まざるとに関わらず遠隔授業が始まってしまったわけで,受講環境にどうしても差が出てきてしまうという点はある程度避けられない状況でした(いや,現在進行形ですね・・・).教員の側は,受講環境の差によって理解度や,それこそ単位取得率に差が出ることは可能な限り避けなければいけないわけで,そう言ったところも意識しつつ資料や課題を準備するわけですが,そもそも提供する側の教員にも環境や準備状況の厳然たる差が生じてしまっているわけで,ますます対応が難しかったというのが今年度であったと思います.
このような差が”生じたまま”という状況は今後絶対に避けなければいけないので,少なくともギャップを少しでも埋めるための,可能な限り解消していくための工夫や,環境の改善を進めていく必要があるでしょう.教員一人一人ができることはやりつつ,加えてやはり,高専全体での環境整備や制度変更も必要になってくると,個人的には思っています(必要になってくる,とは思っていますが,実際に行われるかどうかは,僕個人ではどうしようもコントロールできないところが悩ましいところ).

・・・今年度の遠隔授業については,個人的な観点から考察してもまだまだ言えることがあるのですが,流石にかなりの文章量となってきたので(^o^;; 来年に向けて,については,別なエントリに分割して(近日!?)改めてアップしようと思います.

2020/12/24

2020年を振り返って その1

言うまでもなく,これまでとは全く異なる1年となった2020年.
簡単に振り返るのは難しそうなので,まだ何から書くか決めていませんが(笑),タイトルには”その1”と付けさせてもらいました(その1で終わる可能性もありますが).

あちらもこちらも例年とはガラッと状況が変わってしまったわけですが,個人的に良くも悪くも大きかった研究面の話から先にしようかと思います.

まず,年度末でもある3月.
例年だと,いわゆる全国大会や研究会などで出張がかなりの数入るわけですが,この3月は軒並みほとんど中止.この状況は,東日本大震災があった2011年に通じます(特に,震災は3月11日に起こったので,まさにその翌日に会場に出発,なんて言う学会もありましたが,結果として全て中止になりました).
今回,9年前と異なったのは一点.かなり突発的な状況であったとはいえ,震災よりは検討の余地があったと言うことなのでしょう.一部の学会,ないしは学会の一部セッションは”オンライン”での開催を選択し,僕やうちの学生さん何名かは,オンラインでの発表が実施できました.

情報処理学会全国大会は全てオンラインに切り替え,電子情報通信学会総合大会は一部オンラインに切り替えたことで,国際交流で訪れていたフィンランド学生のNiko君や,大学編入学が決まっていた学生さんも発表ができました.

今となっては,むしろオンライン開催が当たり前となっていて,国際会議の場合は”現地で発表/オンライン発表”が選べるような学会も普通となりつつあります.
それはそれで便利だし,現地に行く必要がないことのメリットもあるのですが,デメリットとしては,現在のオンライン発表環境では,実際に人前で話すのと比較して(悪い意味で)緊張感を感じずに出来てしまう点があります.これはある意味メリットでもあり,例えば初めて学会発表すると言う学生にとってのハードルは下がるかもしれませんが,例えば,

  • 発表内容をちゃんと覚えておらず,カンニングペーパーを見ながら発表してもバレない
  • 質疑応答に緊迫感がない/質問自体がでづらい
  • 接続状況,オンラインの発表環境のため,発表内容が伝わりづらい
といったところも気になります.
いずれ,オフラインでの発表と変わらない臨場感で違和感なく発表できる環境が実現できるようになるかもしれませんが,現状では如何せん,やはりリアルワールドでの発表とは差があります.せっかく発表するのであれば,可能な限り色々な経験を学生にはして欲しいと思うものの,現在ではなかなか難しいというのが,残念でもあり悩ましくもあります.

一方,中々簡単に行けないような場所での国際会議であっても,オンラインなら参加可能というのはメリットなのかもしれません(個人的にはやはり,現地に行きたいですが・・・).

上記に関連して,今年度変わったことといえば,論文執筆頻度はここ最近では一番高かったことでしょうか.学会発表の準備にかかる負担が減り,出張のための準備や,そもそも出張しないので旅費が浮いたこともあり,結果としてできた時間的経済的余裕を活用して,論文は結構書けた感があります.
学会で,オフラインで他の研究者と会って話すメリットは捨てがたいですが,論文もコンスタントに発表したいと考える身としては,今年度は”怪我の功名”ですが,国際会議での発表論文も含めて,実際,ここ最近の中では最も多く論文をpublishできました.

一本は,専攻科生がメインとなって執筆した英文論文誌に掲載されたもの:
「A Study on Intelligent Dialogue Agent for Older Adults’ Preventive Care – Towards Development of a Comprehensive Preventive Care System」(フリーでダウンロードできます)

もう一本は,学会誌から寄稿依頼をいただき執筆したもの.
加えて,自分が発表した国際会議1本に学生が発表した国際会議(最優秀プレゼンテーション賞授業).さらに(現在投稿中ですが)年明けになりますがもう一方国際会議発表がある予定です.

多忙を理由にしてはいけないんでしょうが,ここ最近は”数年に1本”くらいが精一杯だった学術雑誌掲載の論文が今年だけで2本掲載されたのが,やっぱり大きいと思います.これも,1本目の第一著者である専攻科生がこれまたコロナの影響で海外インターンシップに行くことができなくなった分の時間的余裕があったことで作業が進められた面があると個人的には思っています.

色々と不自由を強いられたこの1年でしたし,論文がたくさん出たから結果よかった,とは単純に言えない1年ではありましたが,不自由ながらやるべきこと,できることは最低限,研究面ではできた1年と,ある意味では言えるかと思っています.

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