2022/08/23

SABAKAN ー夏休みに鑑賞した映画ー

書籍の紹介をすることが多いこのページですが,今回は映画の紹介を.
ここ最近,映画を観ることが増えてきました.学生時代もよく観てきたのですが,読書欲と同様,映画鑑賞欲も復活してきたのは良い傾向のように思っています.

この夏休み期間中は既に トップガン マーヴェリック を観ていて,これもかなりの傑作でした.そもそも僕はリアルタイムで,劇場で第一作目を(地元の函館で)観ていて,第一作目を良い意味で意識した作りになっていることに非常に感動しました.とはいえ,当該作品を初めて観る(一作目を観ていない)人にとってもインパクトを与えられる作品だったと思っています.

が,今回紹介したいのはタイトルにもある

”サバカン(SABAKAN)”

という作品.

この映画もある意味 トップガン マーヴェリック と同じく,僕が小学生,中学生の頃を思い出させる1980年代後半を時代背景とする物語です.(まさに一作目のトップガンが上映された)1986年の長崎を舞台に,小学校高学年の少年二人の友情を描いた作品です.

その当時流行っていたキン消し(大人気の漫画,キン肉マンのキャラクターをかたどった消しゴム,と言っても,消しゴムとして使っていた人は一人もいなかったでしょうね・・・いわゆるコレクションのためのもので,僕も大量に集めていた記憶があります)が出てきたり,大好きなアイドルが斉藤由貴だったりと(現代の学生の皆さんは知らないと思いますが,“スケバン刑事“というドラマが人気で,その第一作目に主演していました),その時代に同じように小中学生だった僕にとってはかなり琴線に触れるバックグラウンドでした.

また,少年たちが住む長崎という街は,僕が高専を卒業するまで住んでいた函館市と

  • 坂が多く
  • 異国情緒漂う
  • 港町

であるという点で共通していて,美しい海や山の景色を見ると,ついこの前帰省したばかりだというのに(苦笑)故郷を思い出させると共に,そのストーリーから自分の少年時代も思い起こさせてくれ,おそらく映画を観ていた他の皆さんより僕を感情移入させたようにも思います.

(これから観る人もいるかと思いますので)ストーリーの詳細は省きますが,少年二人の友情物語は単純に感動します.また,このお話は現代,これまた恐らく現在の僕と同世代であると思われる草彅剛が演ずる売れない小説家が,少年時代を思い出す回想として語られていくところもグッときます(この人のナレーションは,本当に,なんとも言えず心に響く印象があります).草彅君は,実際にも僕と同世代なので,ますます感情移入してしまいます.僕より若い世代の皆さんは,もしかするとそこまで映画の世界には入り込めないかもしれませんが,とはいえどの世代の人であっても,自分の子供時代を思い出して感慨深くなることはあるでしょうから,そういった世界観に興味がある人にはお勧めです.

少年二人の両親も,いかにも当時のお父さん,お母さんという感じで,こんな人いたいた!と感じながら見ていました.

特に,父親役の竹原ピストルは最高でしたね.物語終盤で,父が息子と自転車で二人乗りしながら“酒と泪と男と女”を歌うシーンがありますが,これは竹原ピストルの情感に満ちた歌声による相乗効果で,より感動を促したように思います.

映画の紹介をする草彅剛のインタビューが記載されたHPで,是非子供にも観てほしい作品,との一文がありましたら,個人的には,子供も感動する,というより,子供たちがこの作品を観て,どういった感情を抱くのか,単純に非常に興味深い作品だな,と感じました.今回は僕一人で見にきたんですが,上映期間中に子供たちを連れてもう一回,観に来るかもしれませんね.

P.S. と書いていて思い出しました.夏休み,もう一作,映画を見ていました.チビ二人を連れて見にきた“映画 ざんねんないきもの辞典”も面白かったです.オムニバス形式で3話からなる映画でしたが,大人でも十分に満足できる面白い出来になっていました.

2022/08/15

何のために文章を書くのか ー人を動かす文章ー

 先日のエントリで紹介した4冊のうち2冊,

を読みました.両方とも中々に面白く,文章作成の際の参考になる書籍でしたが,この2冊に共通していることとして,タイトルにもある通り,”文章を書く目的”があります.表現は若干異なるものの,双方で強調されているのは,

文章を書く目的は”人を変える=人(の心)を動かす”ことである

ということで,これはまさにその通りだと思います.いわゆる理系(科学系)・工学系の文章(例:論文やレポート)の場合,客観的かつ冷静に研究の独創性や新規性,有用性を示したり,行った実験の結果を明確に示すことで読む人からの評価を得る(査読者からacceptされる/読者にとって有用な知見を与える)必要がありますし,いわゆる一般的な読み物であったとしても,読者がそれを読んで感動したり笑ったり,場合によってはそれをきっかけにその後の考えや振舞が変わるような変化を与えられることが理想で,少なくともそれを目指して書かれることが前提になっているべきでしょう.

堀井憲一郎さんの書籍は,著者がコラムニストであることもあり,”面白い文章”を書くための方法にフォーカスしていますが,それでも学生の皆さんにとって参考になることがたくさん書いていました.例えば,文章を書く際にはその文章を読む人をできるだけ具体的にイメージすべきことや,何を伝えたいのか,まずはそこを意識した上で文章を書き始める必要があることなどは,まさに論文を書く際にも非常に重要なポイントです.

斎藤孝さんの書籍では,企画書からお詫び状,メールの文書まで、様々な文章/文書の書き方を,それらが”書かれる目的”に応じて説明しています.こちらでもやはり,その文章を読む相手のことを意識し,また,その相手に対してこちらはどのような変化をもたらしたいのかについても具体的に意識して書くことを前提とした上での具体的な書き方が記載されていて,中々実用性のある内容でした.

また,そもそも良い文章を書くための準備,練習についても,双方の書籍で記載がありましたが,それぞれの著者の活躍の場が異なっていることもあり,共通していると思えるノウハウもあれば,書く文章の種類によって準備の仕方が変わってくるものだなぁ,と思えるものもあり,対比しながら読むことで読者の考え方の幅も広がり,効果的だなぁ,などと考えながら読み進めていました.

特にここ数年で,文章を書くことに苦手意識を持つ学生が増えてきているように思いますが,恐らくその原因は,

  1. そもそも書く経験自体が乏しい
  2. 経験が少ないので,まずはたくさん書いてみる,ということをしない
  3. 良い文章を読む頻度が乏しい
といったところが主なものと思っています.書けば書くほど上手くなるし,その際,アドバイスを受けながら修正すれば上達のスピードも上がります.上のような書籍を参考にして,練習も積みながら書いていけばさらに効率も良いでしょう.
上記書籍にも記載がありましたが,話すことと書くことは全く別物です(プレゼンがうまいからといって良い文章が書けるわけではありませんし,その逆もあり得るでしょう).良い文章を書くためには,それなりのトレーニングが必要ですが,苦手意識のある人にとって朗報なのは,そのトレーニングは決して”決死の特訓ではなく”,とはいえ,日々のちょっとした努力と継続的に書き続けることで,どんな人でもある程度のクオリティの文を書けるようになると言えることです.

特に,我々が目標としているのは文芸的に素晴らしい小説の大作などでなく,工学的にわかりやすいすっきりと読める文章ですので,文学的なボキャブラリや詩的な表現なども不要です.
一方,上達するまでにかかる時間には個人差もあるかと思いますので,特に苦手意識があるという人ほど,早めにトレーニングを(できる範囲で,でも,継続的に)始めておくことをお勧めしたいところです.高専や大学(特に理系)では,卒業のために論文を書かなければいけませんが,締切数週間前になって,実は文章を書くのが苦手で・・・と言われても,そこから急激に文章力を上げる魔法のような方法はさすがにないと思われます.

@dkitakosi からのツイート