2022/01/07

2021冬の読書週間 ー研究者に興味のある人へ その2ー

 年は変わりましたが,読み始めは去年だったのでタイトルは2021のままとしています.先日紹介した本とは別な本で,中々に実践的な知識が記載されているものに出会いましたので紹介します.いわゆる”ブルーバックス”と呼ばれる有名なシリーズの一冊です.

理系のための研究ルールガイド 坪田一男 著 講談社

先日紹介した「ヒラノ教授〜」は,より大局的,戦略的な話題が著されていると書いたかと思いますが,上の本は冒頭でも記載した通り,より実践的で,良い意味で細かいところまで記載しています.

学生の皆さんにとって,”研究者”というと教員や企業の研究職を思い浮かべるのでしょうが,広義の意味では,卒研(や特研)に取り組む学生も研究者,もしくは少なくとも研究者の卵です(その後研究者を本格的に目指すかどうかは別として).
卵であれ雛であれ,研究をすることになるからには,その業界の知識・ルールは知っておいて方が良いです.それこそ道路交通法のようなルールをイメージしてもらえれば分かる通り,例えそのルールを知らなかったとしても,違反すればペナルティがあります(悪質な場合は罰金ですまなかったり,他人に実害を与え得る可能性もありますね).研究の分野も同様で,学生の皆さんは何も意識せず行ったことであっても,それがルールに反した行動の場合,本人 and/or 周囲に大きな(悪)影響を与える可能性があります.

各学生は原則,研究室に所属していますので,そういったルールを教えるのは指導教員の責任であるわけですが,往々にして,”これは一般世界でも常識だよね”と思えるようなルールであっても知らない人がいたり,教員も想定していなかった(あずかり知らない)状況で,気がついた時にはルール違反が発生していた,ということもあります(最近は特に多い).
そういった不測の and/or 不可抗力的な(?)ルール違反を避けるための予習として読んでみる,という意味でお勧めであるとともに,ルールのもう一つの側面として,その分野の人が活動しやすいようルールがサポートしている,というところもあるので,予め知っておくと研究活動がスムーズに進んだり,”論文投稿や学会発表の際に冷や汗をかかずに済む”,といったメリットもあるでしょう.

卒研に取り組み始める新年度入りたての5年生や,そろそろ研究室配属が気になり出す後期後半の4年生(まさに今)にとっては当然お勧めの本ですし,そろそろ卒論をまとめ始めるとか,ぼちぼち国内外の学会発表の話が出てきた,なんていうタイミングで予習・復習的に関連する節だけ読む,という使い方もできそうです.

ブルーバックスは他にも,純粋に知的好奇心を満たすようなテーマのタイトルも多いので,既に知っている人も多いかと思いますが,興味に合わせて手に取ってみると良いと思います(ちょっと調べてみたら、当該シリーズは1963年創刊,シリーズタイトルは2000を超えているそうです).

2022/01/04

進路活動に向けた「自身のアピールポイント」の考え方

この投稿を執筆した時期(=年末)の半月くらい前に、僕が担任的なことをしているクラスの学生さん向けにまとめた,標記に関する資料をこちらにも(一部修正して)アップしておきます.

とはいえ以下の内容は,今回ふと思い立ち書き上げたものではなく,特に東京高専で教員をやるようになってからはほぼ毎年,進路活動をしている学生に話してきたことです(ポスドク時代や大学教員時代は,親しい後輩などにアドバイスした経験くらいはありますが,そこまで大々的に”進路指導”に携わったことがなかったので,あまりしっかりとは言語化していなかったように思います).

以降からが本文で,毎年学生が(特に高専の学生は)苦戦する、自己アピールに関連した話題です.

まず,そもそも高専4年生になれていて,(恐らく)5年生にも進級でき,卒業できる(であろう)皆さんに長所がないわけがない,というのが大前提です.自分には長所,アピールポイントがないと,面接や試験の直前に言い出すような学生は準備不足,意識不足なので落ちます.

詳細はまた別の機会としますが,高専の学生は(少なくとも他の大学生と比較して)優れているところがたくさんあることを自覚する意味でも,他大学の学生も参加するイベント(できれば学会など)に早くから参加した方が良いと思います.また,企業がどういった学生を求めているかを早めに知ったり,他高専の学生の状況を把握するという目的で,就職支援を行なっている企業(○○ナビさんとか)が主催する説明会には是非参加してください(合同企業説明会は,個人的には参加mustと言いたいところです).もちろん,この企業に興味があるという具体的な名前が挙がる人は,その企業を決め打ちで直接見学に伺うのがベストです.

前置きが長くなりましたが,ここからが本題です.
長所,アピールポイントは,ただ”「コレが得意,コレができる」というだけではダメ”です(言うだけなら,実際にできなくても言えるので).
必ず,自分が実際に経験したことや,その長所で成し遂げたことなど,”実体験”をペアにしてください.
これらを踏まえて,面接などで活用できるアピールポイントの用意の仕方は以下の通り.
  • 自分の長所,アピールポイントを手当たり次第列挙する.それが思い浮かばない人は,学内外関わらず,高専在籍期間中で頑張ったこと,成し遂げたこと,苦労したこと(場合によっては失敗でも良い)などを列挙する
  • 長所,アピールポイントについて
    • それらを生かして実際に成し遂げたことや,普段の生活で活用していることなどをできるだけ具体的に(かつ簡潔に)まとめる
  • 実体験,経験について
    • それらの体験から,自身が具体的にどんな気付きを得たか,どんなことを心がけるようになったか,どういった能力を身につけることができたか,などについて,具体的に(かつ簡潔に)まとめる
  • 上の”「長所,アピールポイント」と「実体験,経験」とのペア”を作っておき,”どちらから聞かれても(話し始めても)もう一方を話せるように”しておく
ペア(対応付け)については,単射である必要はありません.むしろ多価写像でも(一つの要素が複数に対応付いていても)良いです.
アピールポイントは,根拠がないと誰でも(言うだけなら)簡単に話せるので,自分がどういった経験からその能力を得たか,とか,その能力でこんなことを成し遂げた,といった根拠があることで面接対応者によりリアルに伝わります.

例えば面接で何か聞かれた時には,上記どちらを先に回答しても良いですが,アピールポイントから話したなら,それによる成果などの実体験を必ずくっつける,経験,体験から回答したなら,その体験経験からどんな学び(能力)を得るに至ったのかも必ず添える,というトレーニングをして下さい.

リストを作るまでは,一人でもできますし,何人かで集まり,自分以外の人について助言し合うと良いです(自分を客観的に見るためには,これまたある種のトレーニングが必要です).自身では気づかないことも,第三者ならスムーズに指摘してくれることが多いです.

面接は時間制限がありますし,例えば大学編入学で教員が推薦書を書く場合,各学生のアピールポイントなどについては100%,学生本人が自己アピールの文章を作成し,それを提出してもらった後,それをベースに作成します(当然,何も書いていなければこちらも書きようがないので「書けない」といわれておしまいです).
自己アピール文も長過ぎては要領を得ない&そもそも指定の書式があるので,コンパクトにまとめる必要があります.

上記について,企業研究や受験勉強の合間にでも,今のうちから少しずつでも準備しておくことで,準備不足による不合格,不採用を防げます.

最後に一点.
当たり前ですが,準備不足は致命的です.
全く無理ではありませんが,特に就職希望における多くの場合,「第一希望」の先行は活動期間のかなり序盤,場合によっては最初だったりします.
序盤ということは,準備期間も十分に取れない可能性があります.一番入りたい企業の選考を最初に受けて,準備不足で不採用,ショックを引きずったまま他の企業の応募準備をしなければいけない状況を想像してみてください.

上は必ずしも全員そうなる,というわけではありませんが,実際にあり得ます.また,大学編入学,専攻科進学でも起こり得るので,ある意味全員,想定しておくべきシチュエーションです.

また,正直に言って,5年生(4年生の終盤)や専攻科2年生(1年生の終盤)になって本当にアピールポイントが(思い付か)ない,と考える学生がいた場合,こちらとしては何も言いようがありません(ないと言っても何かあるでしょ?と引っ張り出してもらう以外にない).実際には少なからず能力的・性格的な長所や特技,なんらかの資格や頑張りといったものはあるはずですが,例えば4年生になったばかりの段階で,もしかして自分にはそういったアピールポイントがないのでは?と考える学生は,非常に下世話ではありますが,年度当初に必ず決めることとなる委員会活動やその他課外活動の委員などを必ず担うようにしてください.それだけでも(自分で見つけやすい)ポイントを一つ用意することができますし,高専内であれば4年生は中心的な役回りとなることが多いので,担当した仕事が大変である可能性は高いですが,その分得られる経験は本当に尊いものとなると思っています.

最後に,自分の特徴やアピールポイントを発見するためのツール・手法を紹介します.
自分の頭の中で考えたり箇条書きしてみたり,というのがスタンダードかと思うのですが,例えば

  • マインドマップ(自分マップ)
  • 偏愛マップ
といったキーワードでググってもらえると,比較的システマティックに自己アピールのポイントを探し出せるかと思います(上記,後者は良く,自己紹介や他己紹介の際に使用される方法ですが,”自分を知る”という意味で当然,アピールポイントを掘り下げる場合にも役立ちます).

2022/01/01

2022年 明けましておめでとうございます

皆さん,明けましておめでとうございます.今年もよろしくお願いします.

去年は,ここ数年の中でも群を抜いて”過酷な1年”でした.コロナ禍による諸々だけではなく,心身ともに消耗するような出来事が多かったと思います.

そんな状況に引き続いての新年なので,例年だとそれなりに前向きな目標を設定するのですが,今年に関してはとにかく

”心身ともに健康を維持すること”

が唯一かつ最大の目標です.
見栄えはしませんが,個人的には,これでも十分に前向きな目標と思っています.また,上の目標さえクリアできれば,それに付随して色々なサブゴールも必然的に達成できるのではないかと思っています.

ということで,この1年はくれぐれも”安全運転”で行くことを心がけていきます.

@dkitakosi からのツイート