2022/02/19

冬の読書週間 ー教育論の新常識ー

 秋口に偶然見つけて購入して読み始めたものの,かなりボリュームがあり,内容も多岐に渡っているため先日やっと読み終わった以下の本.

教育論の新常識 松岡亮二 編 中央公論新社

一言で言うと、非常に興味深く、リアルタイムな内容なので実感・共感することも多い書籍でした.”教育論”なんてキーワードがタイトルに入っているので,対象読者は学校関係者なんでしょ?と思う人もいるかと多いでしょうが,むしろ老若男女問わず多くの日本人に読んでほしい内容です.また,ある意味ではもろに学校関係者であり,当事者である学生の皆さんにも是非手に取ってほしいところ(生徒レベルだと,ちょっと内容が難しいかもしれませんが,高校生なら十分に理解できるレベルでしょうか).

そう言う意味で,タイトルはもう少しキャッチーな方が色々な人に読んでもらいやすいのでは?とは思いましたが,ざっと目次を見るだけでも

  • 教育格差
  • デジタル化
  • 英語教育
  • Edtech(ギガスクール)

といった,今まさに課題となっている,注目すべきテーマが並んでいることに加えて,コロナ禍のここ数年の状況についても記述があるので,学生の皆さんの視点からも「確かにこれは大変だった/困った」といった実感を伴いながら読み進められるように思いました.

こと教育行政に限った話ではないと思われますが,日本って科学的・理論的な考察をせずに重要事項を決定してしまう傾向があちこちにあるようで,まさに科学的・理論的な物事を教えるはずの教育政策においても,”データがない”,あったとしても”分析しない”で政策を決め,さらに,やったら”やりっぱなし””検証・考察しない”と言う,これが卒研をやっている学生なら不合格間違いなしの,妥当性も有効性も保証できないダメダメな状況なのでは,と思われる状況が垣間見えます.
これまで,国のトップに工学系・理系の人がほとんどいないことも理由なんでしょうが,今の世の中,データは取ろうと思えばいくらでも取れるし,データがあれば予想や分析できることも大量にあるはずなのに,それができないのは構造的な問題があることはもちろん,いわゆる官僚の皆さんには理系分野の人が少ないことも影響しているのではないかと思いました(ちなみに,機械学習分野でアメリカと並びトップを走る中国は,長らく国のトップに理系工学系畑の人がついています).

日本が科学技術立国などと呼ばれていた大昔でさえ,頑張っていたのは研究者個人・個々の研究機関じゃないかと個人的には思っていますが,教育格差が拡大し,すでに先進国とは言えない状況となった今では,国をあげて構造的なところから教育制度を変えていかないと,有能な人材はどんどん日本から出ていくでしょうし(実際,先日ノーベル賞を受賞された先生も,国籍はアメリカに移されていましたね),そろそろ取り返しがつかないところまで来ているように思っています.

このブログを読む学生さんは理系工学系が多いんじゃないかと思っていますが,自分の活躍の場を確保すると言う意味でも,後輩の実力不足に悩まない未来を作るためにも(!?),個人レベルの学力云々だけではなく,”より用意制度を作るための教育政策”に興味を持つという視点は大事なんじゃないかな,と思う次第です.

@dkitakosi からのツイート