2022/12/31

2022年最後の投稿です ー映画鑑賞 ONE PIECE FILM REDー

 本日,2022年最後の日=大晦日です.今年は個人的にはかなり変化の大きな年でしたが,お陰様でなんとか(特に下半期は)心身ともに”比較的健康・健全に”過ごすことができました.

研究面では,久しぶりに国際会議参加のため海外出張にも行くことができましたし,来年度以降につながる”研究の芽”も見出せたように思っており,有意義だったと思います.

生活面で変わったことと言えば,読書欲の映画欲が復活したことが良い変化でした.

ということで昨日,年内最後の映画鑑賞に行ってきました.本当はTHE FIRST SLAM DUNKを見る予定だったのですが,一緒に行く子供たちの気が変わり(!?)標記の映画を見に行くことに(近日,スラムダンクも鑑賞予定です).

まだ劇場版でやっていますのでネタバレ的なことは控えようと思いますが,一言で表せば,さすが大ヒット,ロングヒットの映画,非常に楽しめました.
前半中盤くらいまでは,どちらかというと”ミュージカル映画”のような側面があったようにも感じていますが,UTA(Ado)の歌 and 楽曲自体が良く,現在サントラを買おうかと思っているところです.

一方でやはり,オリジナルストーリーではそろそろ佳境を迎える大作マンガ/アニメとして,中盤以降はどんどんストーリーで魅せて行く,その盛り上がりはお見事でした.特に個人的に印象に残ったのは,(僕の記憶違いでなければ)赤髪海賊団が,クルーも含めて全員しっかりと先頭に参加した場面って,オリジナルの漫画やTV版でもほとんど描かれていなかったように記憶していて,今回,比較的しっかりとその部分が描かれていたことに”お得感”を感じました.

2022年もあと少し.本当は少し宿題が残っているのですが,この宿題は”相手がいるもの”で,相手がアクションを起こさない限りはこちらはリアクションを取れない類のものなので,焦ってもしょうがない,と達観しています・・・と書きながら念の為確認してみたら,アクションを一つ確認できたので,早速そっちの宿題にも(一部)取り組みたいと思います.

来年の抱負などは,年が変わってからまた改めて.
皆様,良いお年をお過ごし下さい.来年もよろしくお願いします.

2022/12/24

文系と理系 ー区別している時点でアウトー

非常に興味深い本を読みました.


ちなみにこの書籍内でも記載がありますが,文系・理系(工学系)といったカテゴリが存在するのは日本のみで,これは非常に“悪しきカテゴライズ“だと思っています.著者もまさにそれを言っていて,とはいえ,タイトルにあるように,いわゆる文系として高校や大学で学んだ人材は,今後グローバル化やデジタル化(AIをはじめとする技術の発展・一般化)が進むにつれて,“「食っていく=給料をもらって生活していく」ことができなくなる“ということを述べています.

この主張,僕的には納得できる部分が大いにある一方で,納得できないというか,抜けている部分があると感じました.
具体的にいうと,“文系だけでなく理系も,いわゆる理系として身につけられる能力だけでは「いずれ食っていけなくなる」“ということです.

日本でいうところの文系人材は,敢えてシンプルかつネガティブな言い方をすると,“高等教育で理科と算数に関する勉強をしてこなかった”人々を指すのが一般的です.それこそ大学入試で物理や数学といった科目が受験科目に含まれないような大学・学部は文系大学・文系学部ということになります.逆にいわゆる理数系の勉強(ばかり?)を中心的に学んだ人は理系人材ということになります.僕が所属している東京高専は“工業高専“ですから理系ということになるんでしょうね.

著者は,今後文系が生きていく(就職する,転職する,起業する)にあたって重要なスキルとして,

英語力,ファイナンス,コンピュータ(プログラミング)

を挙げていますが,これって文系人材のみに必要なスキルでしょうか?率直に申し上げて理系(それこそ高専の学生)にとっても上記のスキルは非常に重要です(というか,知識やスキルがない/足りない人が多いと思います).
上記のうち二つ目=ファイナンスは,いわゆる経済の仕組みやお金に関する知識を指していますが,日本の教育機関でこれをしっかり授業として教えているところはどれだけあるんでしょうか?少なくとも僕は習った記憶がないです(辛うじて,中学社会で株式会社って何?程度のことを習った程度です).将来起業したいような人は確実に,そうでない人も確実に必要な知識ですが,上記の通り学校で教わる機会はほぼないので,残念ながら自分で身につけるしかありません.
また,三つ目のプログラミングは,高専,特に情報工学科では科目もたくさんありますが,では同学科の学生は全員プログラムが得意かといえばそんなことはありません(心当たりのある人もいるでしょう).プログラムが上手く書けるようになるには“数理的なものの考え方”が重要です.プログラムが得意な学生は数学系の科目やその他の情報系専門科目も得意な学生が多いと思いますが,プログラムを扱ったことがない文系の学生であっても,数理的なものの考え方ができれば,今後食って行ける可能性が高いでしょう(逆に,いわゆる理系の学生で,プログラムがもし書けたとしても,数理的な考え方が身についていない学生は将来,困ることがあると思います).

一方,当該書籍では記載がないものの,文系・理系に関わらず必要だと思われるスキルがもう一つあると僕は考えています.授業などでもよく話しているので気がついている人もいるかもしれませんが,ある種何よりも重要なのが

コミュニケーション能力

でしょう.これは上に挙げた3つのスキルの1つ目,英語とは別物です.英語力は語学力であってコミュニケーション能力ではありません.コミュニケーション能力を簡単に定義すると,
“伝えたい相手に応じて,相手に伝わりやすい手段で伝えられる能力”
といえます.実はこの能力,さまざまなサブスキルから構成されています.まず,思いやりが重要です(思いやりがスキルか,という話はありますが,相手の知識量や状態を観察したり推測したりするのは立派なスキルと僕は思います).加えて表現力も必要ですし,何より大前提として,それを伝えられる自身の知識量が重要です.

書籍にも記述がありましたが,英語がペラペラでも,伝えるべき知識がなかったり教養がない,だったり,文法はメチャクチャ知ってるのに,相手によって使い分けられないとなれば,その英語力は完全なる“宝の持ち腐れ“です.そんなくらいなら多少文法に誤りがあろうが発音がおかしかろうが,相手のことを考えて有用な情報を熱心に伝えようとしてくれる人の方がよっぽど好感を持たれるでしょう.

冒頭に書いた通り,そもそも文系理系というカテゴライズは日本特有のもの,と書きましたが,敢えてそこを意識して本書はタイトルをつけたのだと予想します.
その一方で勿体無い,というか,読んでみて強く感じたのは,この本で伝えたい内容は文系人材のみに向けた物ではなく,
“理系文系どころか性別にも年代にも関わらない,(今後)食っていく必要がある人”
を対象としていると思われるので,自分は文系だと考える/感じる人たちだけではなく,ぜひ理系の人(例:高専の学生)にも読んでもらいたい内容だったということです.
書籍終盤では,企業での勤務後,教育業界に関わることとなった方と著者との対談が記載されていますが,まさにこの部分は理系文系関わらず,“日本の教育”について議論されたものといって間違いありません.

書籍の中では上記の他にも,リスクを取らないことほど大きなリスクはない,とか,変わり続けるものこそが生き残る,といった印象的なフレーズも出てきます.
これらも全て,理系文系関わらず全ての人にとって,特に今後さまざまな分野で活躍してほしい学生の皆さんにとって重要な考え方だと思っています.

大学の教員は教授になってしまったら安泰なので向上する気がない,とか,学生に問題があるのは教える側にも問題がある,とか,毎年同じ講義をしている(授業で自分の教科書を読み上げるばかり)と言った耳の痛い記述もありますが,個人的には極力こうならないように努力しているつもりです.こういった書籍を含め,分野に関わらず様々なインプットを継続的に行なっているのは,良質なアウトプットを続けるためです(単純に読書が好き,という面もありますが).また,授業に関しても,コアな部分は一緒ですが,伝え方や説明の仕方が毎年updateしています(年々,学生さんとは年齢差が離れていきますから,授業の合間に話すネタもupdateしていく必要がありますし・・・).

ここまで散々書いてきて,全く逆のことを書きますが,特に学生の皆さんには是非,特に自分自身に対して理系文系というカテゴライズはしないことをお勧めします.要は,
“理系だから◯ ◯は勉強の必要はない“
という自分の可能性を狭めるような意識は捨ててもらいたいと思っています.
そういう意味ではまさにタイトルの通り,自分を理系(文系)と区別した時点で,自身の可能性を自分で限定してしまうから“アウト“ということです.

2022/12/21

映画鑑賞 ーDr. コトー診療所ー

標題の映画,昨日,レイトショーで見に行ってきました.

”Dr. コトー診療所”は,19年前に放送されたドラマシリーズ・シーズン1,16年前のシーズン2と欠かさず見てきました.原作漫画は読んだことがありませんでしたが,当時は,”北の国から”の純くんのイメージがまだ強かった吉岡秀隆の演技が好きで,彼が新作ドラマでどのように演じるのかを期待して見てみたら,演技は期待以上,ストーリは面白くも社会性があり,舞台となっている志木那島(しきなじま:ロケ地は与那国島)の美しさも相まって,ずっと大好きな作品でしたね.

今回も,まず最初に圧倒されたのは大画面で見る志木那島の美しく壮大な自然.ある意味これは完全な”本物”.これでもかと,16歳,歳をとったコトー先生と共に映し出されるのが,変わらぬ自然と時の流れを感じさせて味わい深いものがありました.

コトー先生は髪がかなり真っ白になって,前回テレビシリーズからの時間を感じさせるとともに,診療所スタッフや島の人々との関係性は変わらず,あの続きを見ているんだな,という感慨がありました(これはある意味,今年前半で見たトップガン・マーヴェリックと同様の感覚でした).

とはいえ舞台は離島の医療ドラマ,TVシリーズと同様,シリアスなシーンも随所に(なんなら冒頭から)盛り込まれていて,引き込まれていきます.久々の劇場版であることもあり,当時の子供たちは大人になり,診療所に新たな看護師や研修医もやってくることでストーリーに厚みが出ていました.新キャストも従来のキャストに溶け込んでいる一方,TVシリーズから続くこのドラマのテーマである”離島医療・僻地医療”の難しさや,人生の困難さ,それでも諦めずに立ち向かうコトーや島の人々の,執念に近い生命力を感じられます.
個人的には,新キャストであるキンプリの髙橋海斗(研修医・織田判斗役),生田絵梨花(看護師・西野那美)の存在が,ストーリーの中でも重要な役割を担っていたように思いました.

ちなみに,ここ最近はパンフレットを毎回購入しているのですが,今回のパンフレットの表紙は志木那島の雄大な自然の中に,愛用の自転車とともにポツンと佇むコトー先生が映っています.今回,上映前にパンフレットを買ったのですが,この表紙だけでも先に見ることができて非常によかったと思います.当該の絵は上映された映画のワンシーンとしても(全く同じではないかもしれませんが,同様の絵が)使用されているのですが,「そうか,このシーンが表紙になったのか」ということを認識することで,表紙に対するイメージがガラッと変わりました(ある意味,映画のメインテーマがこの絵なんだろうな,という意味で合点がいきました).

総じて,満足できた映画だとは思うのですが,結末は賛否が分かれるところのように思います(個人的には).あまり細かく書き過ぎるとこれから見る人に先入観を与えてしまうので控えますが,僕としては,上映時間を後30分伸ばしてでも描き切って欲しかったな,と.

分野が全くといっていいほど違うので単純比較はできませんが,主観的な比較で言うと,前回観た土を喰らう十二ヶ月の方が,満足度は少々高かったかもしれません.
・・・と書くと誤解があるかもしれませんが,続編として非常にクオリティは高く,夜遅く観に行った価値は十二分にあったとも思っています.

2022/12/14

映画鑑賞 ー土を喰らう十二ヶ月ー

 以下は,最近見た,とても印象的だった映画の感想です.


「土を喰らう十二ヶ月」

まず,何よりも最初にタイトルに惹かれました.内容に関するイメージが膨らみます.続いて予告編の動画を見て,いい意味で予想通りの内容であることが期待され,その時点で“必ず映画館で観る”ことを決めました(笑).

僕は,人が料理を作ったり,作った料理を食べたりする物語が大好きです.というと,大体どんなドラマでも食事シーン等は比較的よく出てきますが,そもそも“食“が物語の中心であったり,重要なファクターである作品が好物なんです.実際,漫画は美味しんぼにはじまりクッキングパパ,昔はミスター味っ子(かなり昔に完結した&劇画要素も強い漫画でした ^o^;;)も読んでましたし,TVだと孤独のグルメ,きのう何食べた?(双方とも原作は漫画ですが,TVドラマから入って漫画に誘われたタイプです),絶メシロードにタクシー飯店,晩酌の流儀にベイクオフも好きです.

今回観た映画の舞台は長野,四季折々の山里の景色が非常に美しく,その季節に合った,素朴だけれどもある意味手の込んだ,そして何より美味しそうな食材や料理がたくさん登場してきて,しみじみと「美味そうだなぁ」と思いながらニヤニヤしていました.特に僕の場合,ただ料理がドン!と出てくるのではなく,その作る過程が描かれているものが好みで,この作品も例に漏れず,なんなら食材を畑から収穫するところから描いているのが溜まりません.

主演は沢田研二,その昔はスーパーアイドルグループのボーカルで(と言っても,グループサウンズ時代はさすがに僕も知りませんが),その後ソロになっても人気を博していましたが,最近はむしろロックで,自分のありのままをファンにさらけ出すような生き方が評価されているように思います.
劇場は結構,人が入っていましたが,もしかすると40代は僕他少数派で,大多数はジュリー(沢田研二のアイドル時代の愛称)をリアルタイムで応援していた世代の方々だったのかもしれません.
最近では,コロナに倒れた志村けんが当初主演を務める予定であった「キネマの神様」の主演を代役で務められたことが話題になっていましたが,今回の映画ではいい意味で素朴な,ある面では達観し、ある面では妙に人間臭さを感じさせる魅力的な小説家を演じています.

料理が美味しそう,そしてその食材収穫や調理の様までが美しい,というのは,料理面において全面を担当された土井善晴さんの影響が大きいと思います.テレビの料理番組でも(特に我々の世代はお父さんの土井勝さんと共に)有名な方ですが,本当に美味しそうな(そして恐らく確実においしいであろう)料理を造られる方で,この方の協力あってこそのこの映画だとも思われます.

ある意味,土井さんが協力されている,ということを知って,作品への興味がさらに強まった感があります.

食べる,という行為は当然,生きることにつながります.そして,人が日々何をどのようにどんな環境で食べているかが,大袈裟ではなくその人そのものを形成しているようにも感じています.
僕はここしばらく,体調を整え体力を向上させることも目的として,かなり食事には気を遣っていますが,その一方で“我慢しているという感覚はない“と断言できます.実際,食べたいものを食べているし,ハメを外すときはそれはもう酷いものです(苦笑).ただ,それらをトータルして,無理のない,自分に合った食生活を送ることができているように思います.

そういった,その人の多くの部分を形成する食にはどうしても興味をそそられてしまいますし,この映画でも,ただ淡々と日々“ものを食べているだけ“ではなく,それぞれの人生の岐路において,自分はどう生きていくか,何を食べて(生きて)いくか,と言ったシーンも,大いに考えさせられるところでした.
恐らく,10代20代,もしかすると30代くらいの人までは,この映画の良さを十分に感じることができないかもしれませんが,食に興味のある人なら一度観てみて,その5年後,10年後,15年後に改めて観てみると、また違った感じ方ができる,という楽しみ方もあるように思いました.

年末です ー実感あるようなないようなー

タイトルの通り,今年も最後の月,その上そろそろ残り1/2ヶ月ですが,イマイチ実感がありません.コロナの流行はいまだ予断を許さない一方,ワクチン接種も進み移動制限も国内外問わず緩和されてきたおかげで海外出張にも行けましたし,年末ならではのイベントもいくつか入っているので,全く実感が無いわけでは無いのですが.

恐らく一番の原因は,例年この時期だと大量にやってくる”添削依頼”がほとんど届かず”凪状態”だからでしょうね.率直に申し上げて,非常に心配です.このまま凪のままの場合,年度末が地獄と化します(冗談抜きで).現在,実験進行中の学生さんも多いので,事情が全くわからないわけでは無いのですが,それはそれとして進められるものをパラレルで進めていかないと,時間的には間に合わないことがこれまでの経験上”予言”できてしまいます.

そもそも,論文執筆経験がないことは百も承知ですし,自分たちにもその自覚はあるでしょうから,初版で100%近い完成度は,はなから求めていません.考えながら作業を進めていく必要はありますが,むしろ,”進めながら考えて,進めたものに対してコメントをもらいながら修正しながらまた考える”というプロセスで進めていかないと,時間だけが過ぎていくよね,という・・・

この話も最近初めて伝えたわけではなく,なんなら4月,さらにいうならそれ以前の研究室配属の前から話していたように思うのですが,いかんせんやっぱり経験して(失敗して)みないとわからないのかも知れません(ただ,失敗しても良いのであれば良いですが,大部分の人は失敗すると,少なくとも当人にとってはヤバい状況になるはずなんですが).

そうは言っても,こちらも年末年始の予定はすでにプランニングしてしまっていますので,慌てて駆け込んでも”休業中”のタイミングで門が開くことはありませんので,悪しからずご了承ください,としか言いようがありません.とにもかくにも,頑張ってくださいとしか言えません(よっぽど僕が代わりに全部やってしまいたい,と思うものの,その場合卒業するのは僕になってしまいますので).

2022/12/04

総括 ー3年ぶりの台湾出張ー

 タイトルの通り,今回は2019年12月以来,3年ぶりの台湾出張でした(というか,これを書いている時点ではまだ”機上の人”であるため,現在進行形ですが).

久しぶりの出張,ということで,以下の3つのポイントに絞って,今回の台湾訪問を振り返ってみたいと思います.

(1) 出張目的(学会発表(指導),学会発表,日本からきた研究者&現地研究者との交流)について
(2) 台湾の現在について
(3) 今回の出張全体について

(1) 出張目的(学会発表(指導),学会発表,日本からきた研究者&現地研究者との交流)について

 前回出張時が”TAAI2019”,今回は”TAAI2022”と,参加する学会は同じです.日本の人工知能学会(JSAI)と台湾の人工知能学会(TAAI: 学会名と同じ略称です)が主催する国際会議で,我々が参加したのはJSAIがOrganiseするSpecial Sessionでした.
 参加した学生さんは私の卒研室のOBで,現在豊橋技科大に所属する学生さんで,豊橋で従事している卒論と,学会発表テーマをデュアルに研究しているという中々の強者です(その分,無理が祟って色々と”持ってる”面も見せてくれるのですが).上のような状況でもあり,ある程度研究成果も挙がって論文は書ける状況にあったものの,執筆には結構時間を要することとなり,実の所deadline(登校締切)には間に合っていませんでした.が,私が2018年,在外研究時代にお世話になった先生のご厚意でなんとか投稿させていただくことができ,無事acceptされて現在に至っています.
 そういう意味で言うと,やはり僕にとって,2004年から続く約20年の台湾訪問の経験は生きているように思います.特に2018年の在外研究での1年間では,受け入れてくださった中央大學(日本の中央大学とは違います)の先生をはじめ様々な先生にお世話になりました(今回も一瞬だけお会いすることができたのですが,この件については(2)で記述します).台湾での友人が増え,困った時にはフォローしてもらえる関係性というのは非常にありがたく,こちらも必ず,なんらかの形で恩返ししたいという気持ちを常に持っています(今回、僕が海外出張できたように,学生の皆さんが台湾訪問できる形になれば,恩返しという意味でも,学生交流という意味でも貢献できると考えています).

 話は戻り,学生さんの学会発表ですが,かなりタイトスケジュールで準備を進めていたこともあり,実の所ギリギリまで資料は完成していませんでした.が,率直に言って”彼ならなんとかなる(する)だろう”と思っていたことも事実です.少なくとも1年間は卒研生と指導教員として一緒でしたし,その後結局,2年にわたって本科での研究を継続することとなったので,彼のパーソナリティや能力は(良い面も悪い面も)把握できているという感覚がありました.
 台湾到着後も色々と紆余曲折ありましたが(詳細を知りたい人は北越に聞いてください),発表当日の時点では,なんとかなる(個人的には「それ以上」にはなる)レベルになっていたように思います.実際の発表時には,想定外のアクシデントもあったものの,ご覧いただいた他の先生方曰く,むしろそれさえも良い演出に思えた,というほどスマートに発表を実施できていたので,むしろ学生さん自身にとっても今回の経験を自信にしてもらえればと思います.その一方で,やはり自分の発表というのはどうしても穴が目立つもので,むしろそう言ったところに注目して,評価はありがたく頂戴しつつも課題にも取り組んでいく,というスタンスが更なる成長には重要だと思います.

(2) 台湾の現在について
 
 今回の出張も,実はかなりギリギリのタイミングでゴーサインが出たものでした.台湾は10月中旬まで,入国者に対して1週間の自主隔離を経ての(実質)入国を課していたので,1週間程度の短期出張では,”出張期間より隔離期間が長い”状態となり,そもそも現実できな状況ではありませんでしたが,10月中旬に帰省が緩和され,
 ・出発国での3回以上のワクチン接種
 ・台湾での1日おきの抗原検査(陰性なら報告義務なし。陽性の場合は然るべき処置を受ける)
というのが原則となりました.
 現在開催されているカタールW杯ではマスクのない姿での応援シーンが話題となっていますが,台湾では日本と同様,普段はマスクを装着することが義務となっています.とはいえ,人が集まる箇所ではかなり過密になることもあり(台湾名物の”夜市”は,ある意味例年以上の人だかりでした),そんな中でも人々はマスクをつけ,経済を動かしつつも感染対策をとるといったバランスを重視した政策が機能している印象を受けました).
 (1)でも記載した,在外研究でお世話になった先生との再会ですが,結果としては短時間のものとなりました.後から伺った話では,政府の政策として,海外からの訪問者との接触に対するルールのため,長時間の対応が難しかったとのこと.世界から色々な人が集まる今回のようなイベントでは,現地での対応役は必ず必要になってくると思いますが,そうでない人にとっては接触を密にせず,そういった方向でも対策をとっていると理解しました(当該の先生には,「挨拶できただけでも嬉しかったですし,今後も近いうちに&頻繁に台湾には伺うので,状況が許すようになったら是非またお話ししましょう」と連絡しました).
 少なくとも,外国人の僕から見た台湾は,いい意味で非常に落ち着いた対処をしている,という印象を受けました.

(3) 今回の出張全体について

 まず,何より先に言いたいことは,僕自身,台湾という国やその文化,そこに住む人々が大好きであるということ,そこへ久しぶりに訪問できたことが嬉しく,この期間中の全てが楽しかったということです.加えて,思い起こすと前回訪問から18年ぶりとなる台南市に来ることができて,前回訪問時を思い出させる場所や,前回訪問時には経験できなかった色々な場所への訪問やイベントへの参加ができたこと,ここ数年では最も印象的な5日間となりました.
 特に感じたのは”食文化の違い”です.僕はこれまで,台北,桃園(台湾北部),台中(台湾中部),南投(台湾中央部),高雄(台湾南部),花蓮(台湾東部)と言った箇所に複数回訪問しています.台南は高雄同様,台湾南部というイメージでいましたが,こと食文化に関しては,高雄とも台中とも,その他エリアとも異なっていたことが非常に興味深かったです.僕は台湾に訪問した際には,必ず現地の夜市(Night Market)を訪れます.夜市では現地の様々な美味しいものが食べられるんですが,そこに見事に地方の違いが現れます.これまで,特にギャップが大きいと考えたのは,ある意味当然,台北,桃園などの北部と,高雄が含まれる南部との違いでした.台南はその名の通り台湾南部の地域ではあるものの,見事に他の全ての地域と違う個性があり,かつ,(どの都市の夜市も同様ですが)その上で全部美味しいという特徴が魅力的でした.
 今回,台湾の先生から伺った話とも符合しますが,台南は”台湾が台湾と呼ばれる起源”となった都市であり,台湾で一番最初に栄えた街ということで,日本でいうところの京都のような位置付けであるようです.京都が,同じ関西圏である大阪や兵庫とも異なるアイデンティティを持っているのと同様,台南には台中や高雄とは異なる特徴があることが,今回非常に強く印象に残りました.具体的に言うと,夜市で提供されている食べ物の殆どが他の地域では見たことがないものであったり,似てはいるもののディテールが異なったり,さらに(これが一番大事ですが)それら全てが例外なく美味である,と言う点は,人でごった返す夜市を巡りながら,何度口に出して同行していた学生さんに伝えたかわからないほどです.

 今回,学会発表した学生さんは,実の所すでに複数回の発表を実施しているのですが,コロナ禍の影響もあり,実際に現地に訪問し,対面で発表したのは今回が初めてです.そう言った意味もあり,卒研やその他活動との両立もしなければならず,かなり大変であったとは思いますが,そんな中でも最初の”対面発表の場”が台南であったことは,非常に貴重で印象深い記憶・経験となるものと思います.率直に言って,台北や高雄であれば,(特に僕のような台湾大好き人間の場合)行こうと思えばすぐに行けるし,実際に行きたいので行く,と言った感覚の街ですが,台南や台中のような都市は,ある種今回のように,学会開催地であるために訪問の必要がある,といったモチベーションがないと腰が重いかもしれません.逆に,今回のような印象深い経験ができると,逆にそれがモチベーションとなって,再び台南に訪れたい,せっかくだから台湾の他の地域も見てみたい,と言うように繋がっていくように思います.

 これまで,オンラインではあるものの複数の国際会議発表を経験してきた当該の学生さんについては心配していませんが(笑),単に英語が苦手だからとか,準備が面倒だから,とか,何かあったら怖いから,と言った理由で海外での発表や,日本語が通じない国への旅行を躊躇・敬遠している学生さんには,是非一歩踏み出してもらいたいと思っています.
 もちろん,しっかりとした準備や原地の予習なしで乗り込むことはリスクがありますが,それは国内でも一緒です.新たな経験を積むことで新たに見えてくる景色や楽しさが必ずあります.むしろ,失敗でさえが数年後,10数年後,数10年後には”ネタ”になる時代が来ますので,まだまだコロナ禍であるとはいえ,状況が許せば是非チャレンジして欲しいと強くお勧めします.
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