2022/12/04

総括 ー3年ぶりの台湾出張ー

 タイトルの通り,今回は2019年12月以来,3年ぶりの台湾出張でした(というか,これを書いている時点ではまだ”機上の人”であるため,現在進行形ですが).

久しぶりの出張,ということで,以下の3つのポイントに絞って,今回の台湾訪問を振り返ってみたいと思います.

(1) 出張目的(学会発表(指導),学会発表,日本からきた研究者&現地研究者との交流)について
(2) 台湾の現在について
(3) 今回の出張全体について

(1) 出張目的(学会発表(指導),学会発表,日本からきた研究者&現地研究者との交流)について

 前回出張時が”TAAI2019”,今回は”TAAI2022”と,参加する学会は同じです.日本の人工知能学会(JSAI)と台湾の人工知能学会(TAAI: 学会名と同じ略称です)が主催する国際会議で,我々が参加したのはJSAIがOrganiseするSpecial Sessionでした.
 参加した学生さんは私の卒研室のOBで,現在豊橋技科大に所属する学生さんで,豊橋で従事している卒論と,学会発表テーマをデュアルに研究しているという中々の強者です(その分,無理が祟って色々と”持ってる”面も見せてくれるのですが).上のような状況でもあり,ある程度研究成果も挙がって論文は書ける状況にあったものの,執筆には結構時間を要することとなり,実の所deadline(登校締切)には間に合っていませんでした.が,私が2018年,在外研究時代にお世話になった先生のご厚意でなんとか投稿させていただくことができ,無事acceptされて現在に至っています.
 そういう意味で言うと,やはり僕にとって,2004年から続く約20年の台湾訪問の経験は生きているように思います.特に2018年の在外研究での1年間では,受け入れてくださった中央大學(日本の中央大学とは違います)の先生をはじめ様々な先生にお世話になりました(今回も一瞬だけお会いすることができたのですが,この件については(2)で記述します).台湾での友人が増え,困った時にはフォローしてもらえる関係性というのは非常にありがたく,こちらも必ず,なんらかの形で恩返ししたいという気持ちを常に持っています(今回、僕が海外出張できたように,学生の皆さんが台湾訪問できる形になれば,恩返しという意味でも,学生交流という意味でも貢献できると考えています).

 話は戻り,学生さんの学会発表ですが,かなりタイトスケジュールで準備を進めていたこともあり,実の所ギリギリまで資料は完成していませんでした.が,率直に言って”彼ならなんとかなる(する)だろう”と思っていたことも事実です.少なくとも1年間は卒研生と指導教員として一緒でしたし,その後結局,2年にわたって本科での研究を継続することとなったので,彼のパーソナリティや能力は(良い面も悪い面も)把握できているという感覚がありました.
 台湾到着後も色々と紆余曲折ありましたが(詳細を知りたい人は北越に聞いてください),発表当日の時点では,なんとかなる(個人的には「それ以上」にはなる)レベルになっていたように思います.実際の発表時には,想定外のアクシデントもあったものの,ご覧いただいた他の先生方曰く,むしろそれさえも良い演出に思えた,というほどスマートに発表を実施できていたので,むしろ学生さん自身にとっても今回の経験を自信にしてもらえればと思います.その一方で,やはり自分の発表というのはどうしても穴が目立つもので,むしろそう言ったところに注目して,評価はありがたく頂戴しつつも課題にも取り組んでいく,というスタンスが更なる成長には重要だと思います.

(2) 台湾の現在について
 
 今回の出張も,実はかなりギリギリのタイミングでゴーサインが出たものでした.台湾は10月中旬まで,入国者に対して1週間の自主隔離を経ての(実質)入国を課していたので,1週間程度の短期出張では,”出張期間より隔離期間が長い”状態となり,そもそも現実できな状況ではありませんでしたが,10月中旬に帰省が緩和され,
 ・出発国での3回以上のワクチン接種
 ・台湾での1日おきの抗原検査(陰性なら報告義務なし。陽性の場合は然るべき処置を受ける)
というのが原則となりました.
 現在開催されているカタールW杯ではマスクのない姿での応援シーンが話題となっていますが,台湾では日本と同様,普段はマスクを装着することが義務となっています.とはいえ,人が集まる箇所ではかなり過密になることもあり(台湾名物の”夜市”は,ある意味例年以上の人だかりでした),そんな中でも人々はマスクをつけ,経済を動かしつつも感染対策をとるといったバランスを重視した政策が機能している印象を受けました).
 (1)でも記載した,在外研究でお世話になった先生との再会ですが,結果としては短時間のものとなりました.後から伺った話では,政府の政策として,海外からの訪問者との接触に対するルールのため,長時間の対応が難しかったとのこと.世界から色々な人が集まる今回のようなイベントでは,現地での対応役は必ず必要になってくると思いますが,そうでない人にとっては接触を密にせず,そういった方向でも対策をとっていると理解しました(当該の先生には,「挨拶できただけでも嬉しかったですし,今後も近いうちに&頻繁に台湾には伺うので,状況が許すようになったら是非またお話ししましょう」と連絡しました).
 少なくとも,外国人の僕から見た台湾は,いい意味で非常に落ち着いた対処をしている,という印象を受けました.

(3) 今回の出張全体について

 まず,何より先に言いたいことは,僕自身,台湾という国やその文化,そこに住む人々が大好きであるということ,そこへ久しぶりに訪問できたことが嬉しく,この期間中の全てが楽しかったということです.加えて,思い起こすと前回訪問から18年ぶりとなる台南市に来ることができて,前回訪問時を思い出させる場所や,前回訪問時には経験できなかった色々な場所への訪問やイベントへの参加ができたこと,ここ数年では最も印象的な5日間となりました.
 特に感じたのは”食文化の違い”です.僕はこれまで,台北,桃園(台湾北部),台中(台湾中部),南投(台湾中央部),高雄(台湾南部),花蓮(台湾東部)と言った箇所に複数回訪問しています.台南は高雄同様,台湾南部というイメージでいましたが,こと食文化に関しては,高雄とも台中とも,その他エリアとも異なっていたことが非常に興味深かったです.僕は台湾に訪問した際には,必ず現地の夜市(Night Market)を訪れます.夜市では現地の様々な美味しいものが食べられるんですが,そこに見事に地方の違いが現れます.これまで,特にギャップが大きいと考えたのは,ある意味当然,台北,桃園などの北部と,高雄が含まれる南部との違いでした.台南はその名の通り台湾南部の地域ではあるものの,見事に他の全ての地域と違う個性があり,かつ,(どの都市の夜市も同様ですが)その上で全部美味しいという特徴が魅力的でした.
 今回,台湾の先生から伺った話とも符合しますが,台南は”台湾が台湾と呼ばれる起源”となった都市であり,台湾で一番最初に栄えた街ということで,日本でいうところの京都のような位置付けであるようです.京都が,同じ関西圏である大阪や兵庫とも異なるアイデンティティを持っているのと同様,台南には台中や高雄とは異なる特徴があることが,今回非常に強く印象に残りました.具体的に言うと,夜市で提供されている食べ物の殆どが他の地域では見たことがないものであったり,似てはいるもののディテールが異なったり,さらに(これが一番大事ですが)それら全てが例外なく美味である,と言う点は,人でごった返す夜市を巡りながら,何度口に出して同行していた学生さんに伝えたかわからないほどです.

 今回,学会発表した学生さんは,実の所すでに複数回の発表を実施しているのですが,コロナ禍の影響もあり,実際に現地に訪問し,対面で発表したのは今回が初めてです.そう言った意味もあり,卒研やその他活動との両立もしなければならず,かなり大変であったとは思いますが,そんな中でも最初の”対面発表の場”が台南であったことは,非常に貴重で印象深い記憶・経験となるものと思います.率直に言って,台北や高雄であれば,(特に僕のような台湾大好き人間の場合)行こうと思えばすぐに行けるし,実際に行きたいので行く,と言った感覚の街ですが,台南や台中のような都市は,ある種今回のように,学会開催地であるために訪問の必要がある,といったモチベーションがないと腰が重いかもしれません.逆に,今回のような印象深い経験ができると,逆にそれがモチベーションとなって,再び台南に訪れたい,せっかくだから台湾の他の地域も見てみたい,と言うように繋がっていくように思います.

 これまで,オンラインではあるものの複数の国際会議発表を経験してきた当該の学生さんについては心配していませんが(笑),単に英語が苦手だからとか,準備が面倒だから,とか,何かあったら怖いから,と言った理由で海外での発表や,日本語が通じない国への旅行を躊躇・敬遠している学生さんには,是非一歩踏み出してもらいたいと思っています.
 もちろん,しっかりとした準備や原地の予習なしで乗り込むことはリスクがありますが,それは国内でも一緒です.新たな経験を積むことで新たに見えてくる景色や楽しさが必ずあります.むしろ,失敗でさえが数年後,10数年後,数10年後には”ネタ”になる時代が来ますので,まだまだコロナ禍であるとはいえ,状況が許せば是非チャレンジして欲しいと強くお勧めします.

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