先日のエントリで紹介した4冊のうち2冊,
を読みました.両方とも中々に面白く,文章作成の際の参考になる書籍でしたが,この2冊に共通していることとして,タイトルにもある通り,”文章を書く目的”があります.表現は若干異なるものの,双方で強調されているのは,
文章を書く目的は”人を変える=人(の心)を動かす”ことである
ということで,これはまさにその通りだと思います.いわゆる理系(科学系)・工学系の文章(例:論文やレポート)の場合,客観的かつ冷静に研究の独創性や新規性,有用性を示したり,行った実験の結果を明確に示すことで読む人からの評価を得る(査読者からacceptされる/読者にとって有用な知見を与える)必要がありますし,いわゆる一般的な読み物であったとしても,読者がそれを読んで感動したり笑ったり,場合によってはそれをきっかけにその後の考えや振舞が変わるような変化を与えられることが理想で,少なくともそれを目指して書かれることが前提になっているべきでしょう.
堀井憲一郎さんの書籍は,著者がコラムニストであることもあり,”面白い文章”を書くための方法にフォーカスしていますが,それでも学生の皆さんにとって参考になることがたくさん書いていました.例えば,文章を書く際にはその文章を読む人をできるだけ具体的にイメージすべきことや,何を伝えたいのか,まずはそこを意識した上で文章を書き始める必要があることなどは,まさに論文を書く際にも非常に重要なポイントです.
斎藤孝さんの書籍では,企画書からお詫び状,メールの文書まで、様々な文章/文書の書き方を,それらが”書かれる目的”に応じて説明しています.こちらでもやはり,その文章を読む相手のことを意識し,また,その相手に対してこちらはどのような変化をもたらしたいのかについても具体的に意識して書くことを前提とした上での具体的な書き方が記載されていて,中々実用性のある内容でした.
また,そもそも良い文章を書くための準備,練習についても,双方の書籍で記載がありましたが,それぞれの著者の活躍の場が異なっていることもあり,共通していると思えるノウハウもあれば,書く文章の種類によって準備の仕方が変わってくるものだなぁ,と思えるものもあり,対比しながら読むことで読者の考え方の幅も広がり,効果的だなぁ,などと考えながら読み進めていました.
特にここ数年で,文章を書くことに苦手意識を持つ学生が増えてきているように思いますが,恐らくその原因は,
- そもそも書く経験自体が乏しい
- 経験が少ないので,まずはたくさん書いてみる,ということをしない
- 良い文章を読む頻度が乏しい
特に,我々が目標としているのは文芸的に素晴らしい小説の大作などでなく,工学的にわかりやすいすっきりと読める文章ですので,文学的なボキャブラリや詩的な表現なども不要です.
一方,上達するまでにかかる時間には個人差もあるかと思いますので,特に苦手意識があるという人ほど,早めにトレーニングを(できる範囲で,でも,継続的に)始めておくことをお勧めしたいところです.高専や大学(特に理系)では,卒業のために論文を書かなければいけませんが,締切数週間前になって,実は文章を書くのが苦手で・・・と言われても,そこから急激に文章力を上げる魔法のような方法はさすがにないと思われます.
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