2023/02/15

情報の「捨て方」 ーメインテーマは異なる(と思う)、でも、とっても大事ー

ここ最近,いっぺんにたくさんは読み進められないのですが,最近学生さん向けにも(学内限定で)発信した”情報のインプット”に関する書籍を,自分自身に対する復習や確認,場合によっては新たな発見のために読み漁っています.

その中で,前回同様タイトルに引っかかって読み始めたのが以下.


率直に言って現在,我々が触れることができる情報は,我々が想像している以上に膨大で,その中から自分に取って重要な情報のみをピックアップすることは至難の業ですが,不幸なことにそれを理解できている学生さんは皆無と言っていいでしょう.本書でも指摘していますが,そもそも自分に取って必要/有益な情報を得るためには,最低限

”自分にとって不要な情報を遠ざける(スルーする)技術”

および

”自分に取って(即時的に/将来的に)必要(になるかもしれない)情報を獲得する技術”

の両方が必要です.
本書のタイトルを見る限り,上記のうち前者がメインかと思うかもしれませんが,個人的な印象として,本書では後者に大きめのウェイトを割り当てているように思います.

そもそも冒頭しばらくは,どうやって有益な情報を得ていくか,と言う話題にスペースを割いています.
一方,これも本書を読んでいてなるほど!と思ったところですが,そもそも多くの人(学生含む)は,身近に便利な(高スペックな)検索サイトがあるから安心しているものの,それを活用して”何を検索すべきか”については意識していないようだ,と言う推測です(僕も恐らく,そうだろうなと感じています).
実際,学生さんの多くは課題などで「これについて答えよ」と言われると検索サイトをおもむろに使い出し,調べればすぐわかる,と言わんばかりにレポートを出してきますが,だいたいは検索結果の信憑性を検証することもなく嘘情報をコピペしてNGになったり,検索キーワードとして適切なものを入力できず,参考情報に近づくこともできずにタイムオーバー,といったような"こんな便利なツールがあるのに,なんで検索さえできないの?"
と思うことがほぼ100%です.つまりそもそも,(時代の最先端を行く若者のくせに)使い方が分かっていない上に,簡単にガセネタを掴まされてぬか喜びしている,というアホな状況に陥っていると推測しています。

自分にとって必要な情報だけを得る(=不要な情報はシャットアウトする)にはまず,自分に取って必要な情報とは何で,不要なものは何かを知るところから始まります.要は,自身の現在/将来の興味をしっかり把握し,そこにアンテナを張って置けるか,アンテナに引っかかった対象について効率よく知識を得ることができているかが重要です.

例えば上でも例示したような,授業で課題が出されたから仕方なく(安直に)ググる

といったレベルでしか検索サービスを利用していないようであれば,モロに”宝の持ち腐れ”状態であり,常に自分の興味や(興味はあるが)知らない世界に対するアンテナを張っておくことで,現代の検索サービスの存在意義は何百倍、何千倍になる(このような使い方ができない人との格差はどんどん広がっていく)ことになりますよ,と.

加えて,これはついこの前のエントリとも密接に関連しますが,不要・有害な情報を避けながらインプットをしっかりとしていくことは,自身にとってさらに有益な”効果的な情報のアウトプット”に繋がると言う記述を読んで,さらに納得感が強まりました.

本書でも最終的に目指すところは”良質なアウトプットをするためには,良質なインプットが重要(そのため,好ましくないインプットはフィルタリングしましょう)”と言うところなのだな,と認識できた時点で,冒頭からの全ての章のつながりが一気にイメージできた感があります.
さらに,大前提として,ただ単に情報をインプットする意識ではなく,”アウトプットする前提でインプットする”ことを意識することで,情報に関する感度が猛烈に上がることも非常に同意できます(実際,僕がこのブログで紹介している書籍や映画の紹介では,読み終わったら/観終わったら紹介しよう,と言う意識を持ちながら読書や映画鑑賞に臨んでいるので(慣れないと疲れますが),印象的な点,おもしろかったところつまらなかったところ,自分だったらこう書くな/演じるな(?)と思った点など諸々について,メモまで取らぬまでも,記憶にしっかり焼き付けたり,書籍なら印象的なページを写真撮影したりもします).

こういった作業は,皆さんと情報共有するためという目的は当然あるものの,それより何より自分自身に取って,”教養”を涵養するための非常に重要な作業になっています.
本書では教養についても終盤で触れていて,個人的にはとても納得できる説明・定義になっていたので,以下に引用します.

「身に付けるつもりもなく摂取してきたものは、年月を経るうちにいつのまにか、豊かな人生を送るのに欠かせない教養と呼ばれるものに変貌を遂げています」

本書ではタイトルの通り,情報を「捨てる」方法について述べているものの,確実に各々にとって不要な情報は積極的に排除しつつ,その一方で今後必要な & 必要になるかも知れない情報を広く入手することで,今後の自分の”成長のために必要な情報に対するアンテナ感度”をどんどん上げていくための方法について記述しているといえるでしょう.

このため,個人的に本書を読み進めるにあたり,しばらくの間は
なんだ,タイトルと違うじゃん
という印象から始まり,その後
なるほど確かに,”捨てる方法を洗練させるには,選別の方法は重要だね”
と思えるようになり,さらに
そうそう,結局一番大事なのはアウトプットだよ
と考えながら読み進めていき
確かに!教養がないことには(より)良質なインプットもアウトプットも実現できないな
と,大いに納得した次第です.

本書のタイトル(& 興味を持ってもらえたのであれば,このエントリ)に騙されたと思って,読んでみてもらえればと思います.

P.S. 本書の著者,成毛眞氏は,ついこの前,東京高専情報工学科某各年向けに投稿したコンテンツに含まれている書評サイト「HONZ」の代表者であり,日本マイクロソフト社の初代メンバでもあります.

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