2023/02/27

必ず結果を出す人の伝える技術 ー書き方にも生き方にも応用できますー

 ここ最近よく読んでいる,如何に効率よく必要な情報を入手し,それを必要な時に伝わりやすく出力するか,といったテーマの流れで,今回読んだのは以下の一冊.

必ず結果を出す人の伝える技術 佐々木かをり 著,PHPビジネス新書

この書籍はそのタイトルにもあるとおり,基本的には”伝える=話す”ことに重点を置いた技術にフォーカスして記述されています.ですので当然,話すこと,特に”人の心に響くような,受け取った人が新たなアクションを起こすきっかけになるような”伝え方についてわかりやすく説明してあるのですが,その多くは,同様のアクションを起こすきっかけになるような書き方,もっといえば”表現の仕方”にも繋がるように感じました.
そしてこれまた,いつも僕自身が考えていることとの答え合わせもバッチリできました・・・と書くと偉そうですが,伝えること,表現すること,コミュニケーションをとることを考えれば,僕ならずどのような人でも,ちゃんと考えれば同じところに行き着くはず(と思うんですが,なかなかそこまで考えずに,雑な伝え方をする学生 ーには限らないですが,やっぱり目につくのは学生ですー が多いので,是非気にしてみて欲しいところ).

まずは,そもそも伝えたいことがあった場合,それを誰かに伝える目的をはっきりと認識すること.ただ伝達すると言うだけでなく,それによって相手に何らかのアクションを起こして欲しい(例:論文を書いたら,それ読むことで自身の研究に興味を持って欲しい=他の自分の論文も読んでほしい,ある商品の良さを魅力たっぷりに伝えることで,その商品を自分が使うことを想像して,結果としてその商品をオーダーして欲しい,などなど),と言う目的を理解できていないと,話し方にも書き方にも熱意が伴わず,読者(聴衆)にアクションを引き起こすことは難しいでしょう.
加えて,目的がはっきりしないと,様々な物事を表現するための適切な(具体的な)表現を選ぶことも難しくなります・・・というか,そもそも適切な表現を使いたい,と言う意欲も生まれないかもしれません.

日本ではよく,”起承転結をしっかりと”といったことが,話したり書いたりする際には重要だと言われますが,実のところこれはむしろ日本語に特有の概念で,海外であったり,国内でも我々のような工業系分野の人間であれば,まず”最初に伝えるべきは最も重要なこと”です.そして,起承転結は国語の授業で作文を書いたりする際,見聞きしたことがある人もいるでしょうが,実は,効果的に(口頭で)伝える技術,効率的なコミュニケーション能技術について,小中学校での(もしかすると高校,大学でも)授業で教わることはないかもしれませんね.どのように素晴らしい知識や技術を学んでも,どんな素晴らしい発明や商品開発が実現しても,それを世間一般に伝える技術がないと,その技術が広がったり,多くの人に使ってもらうことは困難,と言う意味で,本来であれば最初に教わるべき技術のはずなのに,日本人はこの辺りのスキルを軽視しているのではないかとさえ思ってしまいます.

本書では,伝え方のもう一つの重要なポイントとして,使ってはいけない言葉(表現),是非使いたい言葉(表現)を挙げています.
詳細は実際に読んでもらうとして概要をまとめると,

  • 自分や相手にとってネガティブな言葉は使わない
  • ネガティブな表現はポジティブな表現に置き換える
  • 元々ポジティブな言葉・表現はどんどん積極的に使う,伝える

といったところです.

加えて,既に記載しましたが改めて,

  • はっきりしない抽象的な表現は使わないように,できる限り具体的な情報,伝える側の意図がはっきりと伝わる表現を使う(表現を変える)
  • 自分から見て,ではなく”伝えたい相手にとって論理的な(筋道の通った)話し方”を意識する

というポイントも挙げられています.

口頭で伝えたいことがある場合はさらに,ノンバーバル(非言語)コミュニケーションも活用しましょうと強調します.ノンバーバルコミュニケーションとは文字通り,言語によらない表現(例:表情,ジェスチャ,声の大きさや高さ,話すスピードや抑揚など)ですが,ここまで活用できるようになるとかなり上級者かもしれません(日本人の場合).著者はこれらに加えて,服装や服の色なども,例えば発表の場に立つ人間が,その場をどのように認識しているかを伝えるためのツールとして使えると述べます.

上記諸々のノウハウは,それこそ論文を書いたり,学会で発表をしたり,(時期的にタイムリーですが)就職や進学での面接に臨む際にも重要な項目です.
論文を書くとき,その目的を認識していない,誰を対象に書いている(話す)のかを分からないまま書く/話す内容を考えているようでは,まともな内容になりませんし,言葉の端々に冗長だったり抽象的な表現が出てくるような文章やプレゼンでは,読者や聴衆を納得させることはできません.面接に除く学生が,いかにも練習不足であることが見え見えな受け答えであったり,そもそも面接に臨む服装でない(御社に採用していただきたいです!と言う意欲の見えない),といった場合も,本人が意図しているかしていないかとは関係なく,受け手にとっては不誠実,不確実で,わざわざ時間をとって読んだり聞いたりしてみたい文章/お話だと思われない(当然,そんな学生を採用したいとは思わない)でしょう.


僕は面接練習の時,ほぼ100%学生に伝えることがあります.それは,

”自分のアピールポイントと,そのポイントを獲得するに至った根拠や経験をペアで(たくさん)キープしておく”

ことが重要だよ,ということです.

面接では,自分をアピールする(売り込む=自分を採用したらあなたの会社は得ですよ,と思わせる)ことが大切ですが,例えば「自分は優秀です」とか「自分はプログラムができます」と”言うだけ”なら誰でもできます.アピールをするからには,その能力はどうやって得たのかとか,どんな経験を経てそのストロングポイントが育まれたのか,実体験や根拠が必要です.
逆に,自分にとって有意義だった経験は何?と聞かれた時に,「○○に参加したことです!」と経験だけ答えても,面接においては何のアピールにもなりません.回答に引き続いて,その体験・経験から自分は何を学んだか(得たか)までを回答することで,これも自分のアピールにつながります.面接では(実際には面接に限らずどのような会話でも),相手からどのように質問されるかは分かりませんので,答えを一言一句暗記するのはむしろ逆効果です.どのような聞かれ方をしても,アピールポイント or 経験が出てきて,その後,残るもう一つ(アピールが先なら,続いてその根拠,経験を先に回答したら,それから何が得られたか)がスムーズに出てくるよう,ペアだけたくさん用意しておくことをお勧めしています.

実はこの方法と類似のノウハウが,”自分の体験にタグ付けしよう”というアドバイスとして,本書にも記載されています.自分が経験した様々な事柄にタグ付け(ある事柄に,その事柄で得られた知見をタグ付けしておく)ができていれば,会話の最中に出てくる様々な話題が出るたび,その話題にタグづけされた自身の経験などをスムーズに引っ張ってくることができる,というもので,これはまさに僕が学生の皆さんに伝えている”アピールポイント-経験・根拠ペアを用意しておく”こととイコールの方法と認識しました.

本書の最後では,ここまで紹介した諸々は全てスキルであり,当然重要なんですが,最も重要なのは話す/書く本人の意欲や意志,誠実さである,という記載があります.これもまさに非常に同意できるポイントです.要は,書くにせよ,話すにせよ,伝えると言うことは,伝えたい人がいる,伝えたいことがあると言うことですから,その内容についての熱意や誠実さがあり,それをより分かりやすく伝えたいという意志があるからこそ,様々なスキルを用いて伝えやすくしたいと思うでしょう?と.
自分で一生懸命に取り組んだ卒業研究なら,自分が熱意を持って取り組んだことを,どうやったら色々な人にわかりやすく伝えられるだろう?と考えるのは当然でしょう,と.
採用してほしい企業の面接に臨むなら,どのように取り組めば,人事担当者に自分の良さを,強みを,限られた時間の中で認識してもらえるだろう?
と考えますよね?ということですよね.

逆に言えば,これらが意識できていない人は,本当にその研究に熱意を持って取り組んできたのか?本当に我が社に入りたいと思っているのか,疑われてしまう可能性が少なからずある(場合によっては,本当に熱意があるか,と問われれば・・・と言うケースもあるかもしれませんが)と言うことでしょう.

そんな意味で,今回この書籍を読みながら,妙にここ最近,僕自身がよく考えることとシンクロする内容だな,と,幸か不幸か感心しながら読み終えることができました.

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