2010/05/17

卒論から報道まで

某TV番組などで、”何かを調べる”といったコーナーがある時、個人的な意見ではありますが、そもそも”先に答えありき”なのではないかと訝ってしまうことが少なからずあります。
何故かというと、一見アンケート等の一般的な手法を使い、いかにも多くの人から広くデータを集めましたよ、というポーズをとりつつも、そもそも質問の内容が明らかに回答者を”ある方向”に導こうとしている内容であったり、答えが複数考えられる質問であったり、場合によっては質問対象となっている人が明らかに偏っていたりするからです。

でも、多くの人は一般的に、アンケートを取った、という事実だけを見て、それならこの結果は納得だ、と思ってしまうんでしょうか?
意外とこの手の調査は頻繁に行われ、かつ、場合によっては結構シリアスな調査でも同様の疑問を抱くことが少なからずあります。

データはウソをつく(谷岡一郎 著)

この本はまさに、この手のアンケートの”裏”や、アンケートの取り方の間違いについて書かれた、非常に興味深い本です。
そもそもこの本は、我々がアンケートを取ったり、実験データを記録したりするとき、どのような取り方をすべきなのだろう?ということを改めて考えるために購入した本なのですが、読み進めて見ると、世の中では非常に多くの場面で”データがウソをついている”ことがあると認識させられました。

例えば我々が(シミュレーションも含めた)実験をする時、出て欲しい結果とは必ずしも合致しない結果が出ることがあります。このような時、我々は何故そのような結果が出たのかを考えながら、当初の仮説を修正するのか、それとも、今回のデータはあくまで例外として扱えるのかを考えることになります、通常は。
ここで、時間やお金、その他諸々の理由で、データは出てしまったけれど隠してしまえ、データの数値を書き換えてしまえ、となると明らかに犯罪となります(100歩譲って犯罪とはならなくても、倫理的にあ大いなる問題となり、場合によっては科学の進歩を大きく遅らせることになります)。
結構最近、韓国でもクローン技術関連で大きく話題になりましたね。

そこまで大きな問題とはならなくても、データの取り扱いには十分注意する必要があります。場合によっては、当事者が意識していないうちに、データの良い面しか見ていなかった、良い結果が出るようなデータの集め方をしていた、という場合もあります。
本書の前半は、特に、得られたデータにウソをつかれない方法や心構えが記述されているので、特にこれから実験を繰り返してデータ収集と評価を行う人にとっては非常に勉強になる内容が含まれていると思います。

上記のような、一部不可抗力的なデータのウソではなく、敢えて”データにウソをつかせる”ような方法も存在しています。冒頭にも書いたように、質問の仕方に何らかの意図があったり、質問を投げかける対象が明らかに偏っている場合、というのがそれに当たると思いますが、それらについての記述があるのが本書後半となります。
詳細については省略しますが、情報化社会と言われて久しい現代、自分にとって必要な情報をどう見分けるかも重要ですが、得られた情報がウソを含んでいないか吟味して、対象の真の姿を知ろうとすることも重要な姿勢だと思います。
そしてこのような”データのウソを見破る””誰が見ても納得するようなデータを示す”能力は、技術者や科学者が絶対に身につけていなければいけない能力でしょう。僕にその能力が十分に備わっているとは思えませんが、少なくとも、人にウソを教えるようなことだけは避けられるよう精進していかなければいけませんね。

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