2021/05/17

英語(語学)+1(前編)

今日は,ここ最近ずっと話したいと思っていたことについて書きます.基本的に僕は文が長くなりがちなんですが(苦笑),今回はスッゲェ長いので,前後編の2部に分けました(実は,それでもまだ長いんですが,興味のある人は読んでください).
特に高専生,というか,学生の皆さんに話したいと思っていて,つい先日,やっと僕が担任をやっている学生にも少しだけ話すことができたので,その補足も兼ねて書き進めていきます.ちなみに僕も,しばらく前からぼんやりと考えていたことなんですが,2018年,台湾に在外に行って以降,よりその意識が明確になったという経緯があります.

語学はできたほうが良い,世界中の人と話せる,話せると受験に有利,などなど,英語をはじめとする語学は”勉強すると良い”と言われてきて,実際に我々教員もそうやって学生の皆さんに語学習得を奨励してきました(もちろん中には,自らその必要性や語学習得の楽しさに気づいて,というかそれを楽しいと感じて,積極的に身につけている人もいるでしょう).

上記はある意味真実で,語学を習得するメリットが並んでいるわけですが,幸か不幸か個人的には今回,語学を勉強するメリットではなく”語学を学ばないことによるデメリット”といえるポイントについて紹介したいと思います.

冒頭で,台湾での在外の経験に触れましたが,皆さんは台湾の語学事情についてはご存知でしょうか?台湾は親日の国で知られていて,日本語を話せる人も(特に第三次産業関連や,アニメが好きな学生に)多いですが,最低限読み書きができないと"お話にならない"のが英語です.

なぜ,お話にならないのか,理由はわかるでしょうか?

台湾の現在の人口は2300〜2400万人くらい,日本の5分の1程度でしょうか.そのうち,学生はどのくらいいるでしょうか?後ろの話とも関係してくるので先に書いておくと,台湾は日本を上回る猛烈なスピードで高齢化が進んでいる最中なので,割合的に学生の世代は多くないし,今後はどんどん減っていくと予想されています(当然,人口も減っていくでしょう).
台湾の母国語は中国語,ではありますが,実は台湾で使用されている漢字は中国本土で用いられている中国語(簡体字)とは異なる繁体字と呼ばれるもので,日本で昔使われていた,”複雑な,画数の多い旧字体”と類似しており,簡体字と繁体字はほぼ別な字と言って良いでしょう(おそらく,音声でのコミュニケーションは可能ですが,台湾の人は中国本土の字を読めないと思います:もしかすると,本土の人は台湾の字を読めるかもしれません・・・中国の簡体字は繁体字を文字通りsimplifyしたものなので,originalは推測できるかも).

若干横道にそれましたが,要は何が言いたいかというと,台湾で教科書をはじめとする書籍を母国語で作ろうとすると,母国語を読める人はほぼ台湾の人に限定される上に,台湾の人口は高々2千数百万人ですから,ただでさえ売れない(!?)教科書をわざわざ繁体字で作ったり,英語の専門書を繁体字に翻訳しても儲けがありません.老若男女が手に取るであろうベストセラーの小説であれば翻訳されるかもしれませんが,国民全員が手に取って買っても,人口の母数が限られていますからやっぱり儲けはそれほど期待できないでしょう.
そうなると,最新の理論が英語で記載された教科書があったとしても,それを翻訳しようということにはならず,”原書のまま読め”ということになりますから,
英語が読めない=勉強をすることができない
ということになります.

ちなみに上では勉強(教科書)についての話題にフォーカスしましたが,これは一般の製品についても同様で,良い商品を作ったところで国内だけで流通させても儲けはあまり出ず,必然的に世界を相手にしないと商売自体が成り立たないことが多いと推測できます.
在外で台湾の大学でお世話になっていた際,現地の教員から聞きましたが,台湾ではいわゆる事務職への求人票にも,”TOEIC○点以上”といった語学力に関する条件が記載されることが少なくないようです.
例えば技術者の場合,最新の論文や教科書を読むため英語力が必要であることは言うまでもありません(日本でも当然,最新の情報はまず英語でpublishされるので,英語が読めることが重要ですし,自身の研究成果を公開する場合も,英語で書けないことには世界中に発表することはできない=日本語で書いてもそもそも読める人がいないから意味がないと言うことになります).
が,海外を相手に商売をする必要がある場合,電話の応対をするような事務職であっても英語がしっかりと理解でき話せないと,大事な連絡の意味を取り違える,なんてことが起こってくるので,やはり英語力が必須と言うことでしょうね.

しばらく,台湾における状況について記述してきましたが,ここまで読んできて,日本との共通点には気がついたでしょうか?
  • 高齢化が進んでいる(これから進む)=人口が減る/今後減っていく
  • 母国語が特徴的
台湾にとっての一つのメリットは,音声コミュニケーションであれば中国本土とやりとりできることでしょう.中国本土の市場は大きいですから,本土でも利用できる製品を本土に輸出(?)できれば大きな利益を上げられるかもしれません,が,皆さんもご存知の通り台湾と中国は微妙な関係ですので,あまりそのメリットにはすがることができないかもしれません(ちなみにここまでの話&これ以降の話,主な対象者は日本も台湾も,大学生や高専生などの高等教育を受けている人or過去に高等教育を受けた人,と考えてください).

翻って日本です.
日本語は世界でも習得が難しい言語と言われていますし,海外の人々がわざわざ日本語を習得して日本人と取引したいと思うことは,それほど多くないでしょう.むしろ我々が英語なり中国語なりを習得する方が近道ですし,個人レベルでも(自分の収入をあげるという意味で)有効です.
加えて,少子高齢化です.僕は介護予防研究を行っているので,台湾や日本,その他の国の高齢化率などについては比較的よく知っている方かと思いますが,改めて日本の人口の推移を調べてみて(予想していたとはいえ)かなりビビりました.総務省の「総人口の長期的推移」を見ると,2100年の人口は多く見積もっても6400万人,低く見積もると3770万人です.昨今の少子化対策が全く効果を表さないどころか出生率が下がり続けていることを考えると,低い方の見積もりさえ下回りそうな勢いかと思います.ちなみに,その時点での高齢化率の予測値は約40%で,人口のほぼ半分が高齢者,若年人口は9%を切る予想なので,国内の若者向けだけに製品を作ったところで,多く見積もっても600万人くらいまでにしかリーチしないという話になります(ちなみに,総人口がピークである2004年の若年人口は1759万人ですから,単純計算で市場は1/3です).

さて,前置きが非常に長くなってしまいましたが,ここまで書くと,語学を学ばないことによるデメリット,なんとなく僕が言いたいことはわかったかと思います.

ぶっちゃけ,ここまで来ても外国語は苦手,という人も,別にお金儲けしたいと考えていない,という人もいるかとは思いますが,状況によっては,お金を儲ける以前に,通常の生活を送るための最低限必要な費用を賄うための,”読み書きソロバン”としてのスキルの一つに「外国語(主に英語 or 中国語)」が入ってくる可能性が高いのでは,と僕は予想しています.
学生一人一人の能力やポテンシャルといった個人的な能力とは別に,日本自体は既に先進国ではない,また,科学技術立国ではない,という意見もチラホラと聞こえるようになりました.現在高専生であったり,高専生と同世代の学生がバリバリと働く年代は上記予想よりもかなり近い未来寄りですので,上記ほど悲観的な状況とはなっていないかと思いますが,少子高齢化が着々と進んでいるという感覚は持っているのではないでしょうか.この状況は,このまま維持されるのではなく,ネガティブな方向にまだまだ進行していくこと,また,進行の果てにどのような状況が訪れるのか,といったところを予想・想像していくと,幸か不幸か外国語を学ぶことのメリット以上に,学ばないことのデメリットが自身の外国語学習のモチベーションを上げる(学ばざるを得ない状況に追い込まれる)ということがあり得るのではないかと思っています(苦笑).

必要に迫られて勉強するのが最高のモチベーションであるのは一つの真理ですが,社会人になって仕事を抱えながらの勉強は非常に負担が大きいです.一方でそういった必要性が必ずしもない or 予測できない状況でモチベーションをあげて勉強するのは大変かもしれませんが,(社会人と比較して圧倒的に)容易に時間を作れる学生のうちに学べるところまで学んでしまうことができれば,いざという時の助けとなることはもちろん,語学習得のポジティブな理由として挙げられる恩恵も当然得ることができるので,少なくとも悪いことはない,のではないかと思っています.

・・・ただ,個人的にはもう一つ,このエントリのタイトルにも記載した通り,必要,かつ,重要なポイントがあると僕は考えています.
冒頭で予告しましたが,久しぶりに猛烈に長文を記載しましたので,残りは次回(後編)に回します.後編は,ここまで長文とはならないようにがんばります(!?).

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