2023/03/06

自分の強みを見つけよう 「8つの知能」で未来を切り開く

今日紹介する以下の書籍は,タイトルだけ見ると自己啓発書的なイメージが強いように思うものの,実際に読み進めてみると,そういった側面もあるものの,むしろこのタイトルにもあるとおり,まずは自分自身を正確に,具体的に捉えるための尺度にフォーカスしており,そこに興味を持ったことから読み始めました.

自分の強みを見つけよう 「8つの知能」で未来を切り開く 有賀三夏 著,yamaha music media

多くの人は,知能指数(IQ)という言葉を聞いたことがあると思います.一般的にIQが高い人は“頭の良い人“などと言われる(見なされる)ことが多いですが(この辺り,書き出すと長文になるので興味のある人は調べてみてください),実際のところ,IQを算出するテストは頭の良さを測るには分野が偏り過ぎており,例えば本書では「主に人間の記憶力,推力,判断力から測定するもの」と定義されているように,原則変動しない,数値化・得点化された単独の尺度として利用されています(別な資料でも,論理(数学)的,言語的,空間的な能力に基づくといった記述があります).

個人的にもこれは少々乱暴な尺度だと感じていて,人間の能力ってそれらだけではないよね?というところでタイトルに引っかかって見つけたのが本書でした.
本書では,人間の知能は単純に数値化できる単一の尺度では表現しきれないし,可変だし,鍛えることができる,という,そもそものIQの考え方とは対照的な前提からスタートしており,

  • 論理・数学的知能
  • 言語的知能
  • 音楽的知能
  • 空間的知能
  • 博物的知能
  • 身体・運動的知能
  • 対人的知能
  • 内省的知能
の8つからなるとする“多重知能理論”について紹介しています.

これらの根拠は,それぞれの活動によって活発化する脳の領域と対応づけられているため,科学的根拠もある程度はっきりしていると思われますが,IQのようなある特定の側面のみに注目した尺度ではない(&得点が高いか低いかで“その人全ての知能(≒頭の良さ?)が判断されてしまう“),ということと,人によって得意不得意な分野があるので,その凸凹を見ながら,“自分はどの知能が優れているのか,どこが強みなのかを把握するために活用できる“という点が重要だと感じます.

また,何か新たな知識を学ぶ(本書では英語を学んだり,映画や小説を見た/読んだ時に感想を話し合う,といった例が挙がっています)際,その人のどの知能が発達しているかによって,学び方(教え方)の入口(本書ではエントリーポイントと表現されています)が異なる,別な言い方をすれば,ある方法で上手く学習が進まなくても,その人の知能に応じた別なアプローチで学習することで,同じ対象でも学習効率が上げられる効果が期待できるとしています.
確かに実際,英単語を覚えたり英会話を習得する際,とにかく喋ってみる、という実践から入る人もいれば,単語をしっかり覚えて文法を覚えて,という人もいれば,それらをミックスして上手く習得できる人もいるでしょう.教える側の教員としても,何かを教える際のアプローチとして,黒板に書く一辺倒ではなく,実例を挙げてみるとか,実際にやってみてもらうとか,図示してみるとか,”複数のゴールへの道筋“を用意しておくことで,より多くの学生に理解してもらうことができるだろう,ということは,実体験としても納得できます.

一方で,本書の少々残念,というか物足りなかった部分としては,この理論を説明するにあたって,IQとの対比をはじめとした歴史的背景を紹介したり,逆に一部専門的過ぎる部分があったりと,フォーカスが絞りきれていない点です.特に,この理論を活用してどうやって実際に個々人にadaptした教え方をするのか,といった部分や,個々の知能の測定方法の詳細などについての記述が若干足りていないところは,良くも悪くも欲求不満な(もっとしっかり書いてほしいと感じた)ところでした.

ただ,この理論自体,IQを完全に否定するものではないと個人的には思いましたし,自分が自分自身の(弱みよりむしろ)強みを知ったり,自分の能力向上の際,自分が思っている知能ではない知能を活用するアプローチで新たな発見や成長に繋げられる可能性を提示するという意味で,面白い考え方だと感じました.
多重知能理論自体,提唱されてからまだ間もない理論のようですが,アメリカやアジア圏で,実際に教育に取り入れている機関も多くあるようで,むしろこの本で十分に記述されていない部分についてより深く知るため,もう少し勉強してみようと思わせられているという意味で,本書の存在意義は十分に達成できているのかも知れません.

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